Review
 
『[α]アルファ』 くらもちふさこ
 

 帯の文句によると、「7年ぶりの新作」ということになる。
 しかしくらもちふさこほど「最新作が最高傑作」になる漫画家もいない。《ヤングユーコミックスワイド版》を読む間、何度も鳥肌が立った。

 本作は月刊誌《コーラス》(集英社)の連載をずっと立ち読みしていたのだが、単行本収録のものとは順番が違い、時系列に発表されていたわけではないようで、非常にわかり難かったというか、オムニバスな読み切り短編が『チープスリル』の時のように最後に咬み合う話なのかな…? と初め勘違いしていた。

 《ヤングユーコミックスワイド版》をのっけから読んだ人は、遂にくらもちふさこもファンタジーに手を出したか! と吃驚するかもしれない。
 ネタバレで申し訳ないが、それらは劇中劇『α』と、それを演じる役者たちのストーリー『+α』の2本立ての構成で、その構成力に舌を巻いてしまうのは勿論のこと、その劇中劇の面白さにも圧倒される。
 特にSF劇は抜群の面白さで、くらもちふさこのSFを読めたというだけでも(そしてその力量に)感動もの。

 話をメイン・ストーリーとサイド・ストーリーに分けることで、物語に無限の広がりと表現の新境地を試みることが実現している。そしてそれが少しも欲張りに見えない。
 『チープスリル』とは似て非なるアプローチがそこにはある。村上春樹の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』や『海辺のカフカ』とも違う。『ガラスの仮面』ともレベルが全然違う(爆)。
 が、考えてみればむしろこの広がりは、余程アイデアのデパート(手塚治虫の言葉(笑))の持ち主でなければ実現しない。
 くらもちふさこに枯渇はないのだろうか…。

 疎外感、それは恋愛感情から起きるのか。そして嫉妬。期待。悦び。。。  

「好きになる人なんて、瞬時でわかるわ。
 何億の人ゴミの中で、その人が背を向けていても」

 劇中のセリフが、切ないまでに現実に呼応する。

 とにかく、この上下巻を読んで貰うしかない。詳しくは書かない。
 まとめて読むことで、僕のように連載を立ち読みで済ませていた者には見えなかった組み立ての妙技と、画力の妙技が浮き彫りになってくる。
 そう、見落としがちだが、新しい道具を用いた新しい表現と、従来の道具を駆使した新しい表現が画稿に違和感なく同居している。
 僕など、何度もページを戻りながら読み返し、読み砕いた。そしてため息が出た。

 丁寧に、丁寧に読んだ。
 読み終えることがこんなに惜しく思えた漫画は久しぶりだ。

 
 

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