Review
 
いしいひさいち
 

ほんの一冊

ほんの本棚

 いしいひさいちの(私から見た)最大の魅力は、その頭の良さに尽きる。
 彼への賛辞の多くは「四コマまんがに革命をもたらせた天才」に沿ったものだが、天才にはあんな小市民的な発想は成し得ない。
 そう、いつの時でもいしいひさいちは小市民的である。庶民的なのとはちと違う。生活(くらし)に密着しているからこその視点、そこには「風変わり」とされるいしいの伝説のカケラもないフツーさがある。天の邪鬼だろうことは見えているが。
 例えば『B型平次』の目。確かにあれはB型人間の目である。が、天才は血液型による性格などに頓着しない。いしいひさいちは多分、B型の人間が気になってしまうA型なんだろうな… と想像がつく。
 意在言外なオチに、判らない者には判らないだろう四コマも多いが、読者を選ぶが如く四コマにある以上は語らない突き放し方も恰好いい。アニメ化されたタイトルも幾つかあるが、門外漢を決め込んでいる。たとえパートナーがジブリであろうと。
 いつ何時そのアイデアは出るのか、その発想する瞬間を見てみたい(立ち合いたい)気はする。その時きっといしいひさいちは、天才の顔をしているのだろう。
 私は割と早い時期(『タブチくん』以前)から、いしいひさいちを買っていたので、労せずしていしいひさいちの漫画はほぼ揃えている。が、同人誌として最初に発行された『Oh! バイトくん』全3巻のうち、74年に発行された1巻のみを持っていない。これはとても悔しいし、これ程読みたい!と切望する本も他にない。見掛けた方は、ぜひご一報を。
 ネットでサイン本も見たが、これも悶絶する程羨ましい。私はいしいひさいちのサインが欲しい。
 優に150冊を越す氏の著作を四半世紀に渡って読み続けている私である。私の中にキクチくんが、広岡先生が、藤原先生が見出されても何ら不思議はない。逆にエンターテイメントの巨匠である手塚や石森からは、人格形成に及ぶような影響は与えられていない。


 と、今回はいしいひさいちの書評本『ほんの一冊』(朝日新聞社・刊)『ほんの本棚』(東京創元社・刊)に倣って書いてみた。いつも想い余って長々とやってしまうが、レビューなんて、このくらいシンプルなのがいい。

 
 

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