Review
 
いろはにこんぺいと ぼくはくらもちふさこが大好き
 

いろはにこんぺいと

© F.Kuramochi

 『海の天辺』('88)は、10回は読んでいる。この作品は脇役の生徒も含め、各々がはっきりとした性格を持っている。それが現実の日常のようにきちんと描かれているから、典型的な少女漫画ストーリーであるにもかかわらず、そのクササを微塵も感じさせない。そして、切なく胸をくすぐってもくれる。
 この作品は何度読んでも読み飽きることがない。そして読む度に、コマのひとつひとつに新しい発見がある。
 カバー折り返しの「作品かいせつ」もショッキングなくらいお洒落で、このHPの「プロフィール」に色濃く影響が出ている。


 『東京のカサノバ』('83)は、暁の綺麗な顔を伝う涙がいい。この作品あたりから、他の少女漫画家とは一線を画した絵の上手さが際だってきた。そして『A-Girl』('84)『Kiss+πr2』('86)『千花ちゃんちはふつう』('87)と、綺麗という言葉だけでは言い表せない、性格を表情に携えた独特の絵を確立していっている。


 『チープスリル』('90)は良くできた作品だ。くらもちふさこは、一作一作他の作家にない(本人にもない)作風にチャレンジしているが、このプロットには予想しなかった意外さがあり、しかもそれが成功している。男性が読んでも十分面 白い作品だと思うが、逆に「別マ」の読者層には少し合わないような気がする。圧巻だ。


 ストイックな展開なのに、続きを楽しみにしてしまう不思議な魅力があるのが、現在も「コーラス」に連載中の『天然コケッコー』('94)だ。この淡泊な表現にこそ、漫画家としての力量 が表れるというものだ。キャラクターも秀逸である。


 くらもちふさこのデビュー当時の作品を読んだことがある。正直、ちょっとキツイ。よく編集者の新人を見る視点として、「絵は描いていけば上手くなる。だから絵の上手・下手よりもプロットを組み立てる力やセンスを買う」というが、自分が編集者だったらくらもちふさこの才能は見出せなかっただろう。

 デビュー作『メガネちゃんのひとりごと』('72)、『白いアイドル』('75)、『わずか5センチのロック』('72)、『糸のきらめき』('77)、『おしゃべり階段』('78)を追うことで、くらもちふさこのその昇華の過程の勢いが見てとれるかもしれない。

 それが『いつもポケットにショパン』('80)で見事に才能の開花を見せている。名作として誉れ高い作品なので、ここでくどくど述べたりはしないが、くらもちふさこの凄いところは、他の力のある漫画家でも『いつもポケット・・』なら、それが終着完成形となるような作品であるのに、この作品以降もこの完成作に引きずられることなく新たな切り口で作品を産みだし、ことごとく成功させていることである。


 『いろはにこんぺいと』('82)。この作品がどうしたわけか、僕は無性に好きだ。登場人物がそれぞれにいじらしい。こんなにいじらしくて、こんなにいとおしい作品は、漫画の中でも希有である。続編にあたる『こんぺいと・は・あまい』('83)も、ますますいじらしい。


 賢明なことに、くらもちふさこの作品はアニメ化されたことがない。
 だから本サイトで取り上げるにはどうかと、この1年間思いあぐねてきたが、このことを伝えたい衝動に負けた。

 これまでにくらもちふさこの漫画を読んだことがない人は、本当に幸福だと思う。何せこれだけの作品を、これから読む楽しみがあるのだから(=^.^=)

 
(本稿は、「わんだや」に寄稿したものを加筆・修正しました)
 

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