同世代の共通語 アニメソングの逆襲
 
 

 その日われわれ4人は「つぼ八」に集結した。

 先週行った「安兵衛」は、もうしばらく行けそうにない。店の親父は吉田に「あの連中と呑むと躯を壊すから、もうつきあわない方がいいよ」なんて云ってたらしい。余計なお世話だ。

 「つぼ八」では座敷に通されたが、まだ5時半とあってカウンターにちらほら客がいるだけで、座敷にはわれわれだけだった。
 それがもう10時を過ぎると、いつの間にか店内は客でいっぱいになっていた。長っ尻は、僕たちのいけない習慣だ。と、思いつつも酔っているときはお構いなしだ。



 僕は《昭和30年代のためのテレビまんが大全集》というHPを開いたという話題を持ち出した。
 自然と流れは、懐かしいテレビまんがの話になる。

 一通り皆が蘊蓄を語り尽くすと、アニメソングで「しりとり歌合戦」をしようということになった。

「♪そ〜らをこえて〜、ラララほ〜し〜のか〜なたぁ・・のた!」
「たぁ?、よ〜し♪た〜まな〜んかはねかえせ〜、ヤ!・・・」
てな具合で、われわれは盛り上がっていった。声もだんだん大きくなっていく。

 その時、僕は同じ座敷の向こうの膳にいるおやじと目が合った。50歳くらいだろうか、部長面 したその男は、睨み付けるような目でこちらを見ている。
 普段ならここで怯む僕だが、酔っているときはお構いなしだ。

「♪まっかなマントをひるがえしぃ、きた〜ぞぼくらのパーマンがぁ・・のが!」
「がぁ?・・がなんてあるかよ・・・
 すいませーん、お銚子追加してくださーい、え?熱燗熱燗」

なんてやっているうちに店の人が来て
「すいません、他のお客様もいるんで、もう少し小さな声で・・・」
などと云われる始末。
 いけない、これでは先週の「安兵衛」の二の舞だ。と、思いつつも酔っているときはお構いなしだ。




「♪ほげほげ たらたら ほげたらぽん・・・」
「なんだっけ?それ」
「どろろ!」
一同「あははははは」
その時、僕はまた例のおやじと目が合う。そろそろヤバイか。

「♪やみにか〜くれていきるっ、
 おれたちゃよーかーいにんげんなのさ・・のさ!」

「さ?・・・さ・・ね・・」
逡巡していると、となりの膳から
「♪サンド〜バッグにぃ、うかんで〜きええるぅ
 にくいぃあんちくしょ〜の〜かおめがぁけぇ〜・・・」
と同年代の見知らぬ男が唄いだした。
 すると今度は違う席から
「♪ゲ・ゲ・ゲゲゲのゲー・・・」
と続く。

 気が付くと、見知らぬ5つのグループがアニメソングの「しりとり歌合戦」を競うようになっていた。酔っているときは皆お構いなしだ。
「あははははは」
 ここまで盛り上がってしまうと、店の人もあきれて何も云わない。

「♪お〜らぁグズラだどヒヒヒ・ヒー・・のひ!」

「♪そーらにそびえる、くろがねのしろー・・・のろ!」

「♪おおきなそ〜らを、ながめた〜ら
 し〜ろいく〜もが、とんでいた・・のた!」

「あははははは」

 でかい歌声が交差する店内で、苦虫をつぶしたような顔をしながら呑み続ける例のおやじ。目は合うが何も云わない。見たか!勝利の女神はわれらに微笑んだのだ。

「あははははは」




「♪チキチキマシーン、チキチキマシーン
 猛レ〜〜〜ス〜ウ〜ウ、ウ〜ウ〜ウ・・のう!」
 この場合、本当は「す」だが、酔ってるときはお構いなしだ。

 僕に順番が回ってきた。
「う?・・う・・う・・そうだ!
 ♪うめぼしでんかがやってきた、とんがりあたまにどんぐりめだま・・」

 意気揚々と僕が唄ったその時、例のおやじが部長面を上げ、とうとう口を開いた。

「ウメ星デンカの歌の最初は
♪スッパンパラパン、スッパンパンだ!」



 ・・・・負けた。
 
「鉄腕アトム」(鉄腕アトムより) 「ビッグX」(ビッグXより) 「ぼくらのパーマン」(パーマンより) 「どろろの歌」(どろろ百鬼丸より) 「妖怪人間ベム」(妖怪人間ベムより) 「あしたのジョー」(あしたのジョーより) 「ゲゲゲの鬼太郎」(ゲゲゲの鬼太郎より) 「おらぁグズラだど」(おらぁグズラだどより) 「マジンガーZ」(マジンガーZより) 「サザエさん一家」(サザエさんより) 「チキチキマシーン猛レース」(チキチキマシーン猛レースより) 「ウメ星デンカがこんにちは」(ウメ星デンカより)
 

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