脇役劇場

 みなさん、こんにちは、ソーハイです。今年2作目になりますがよろしくお願いします。

第4回 タイガーマスクと原作と異なるラスト


 今回はタイガーマスクについて書きます。当サイトでもおなじみの「あしたのジョー」、「巨人の星」と同じく梶原一騎の原作です。知名度度も高く、原作もしばしば復刻されています。では作品について書いていきましょう。

 幼いころに両親を亡くして孤児院で育った伊達直人は、貧しさから抜け出すため、悪役レスラー養成所「虎の穴」に入所します。
 「虎の穴」のきびしい訓練を経て直人は、タイガーマスクと名乗り、アメリカで反則専門の覆面悪役レスラーとしてデビューし、「黄色い悪魔」と呼ばれるようになり、日本に帰ってきます。
 直人は、自分の育った孤児院の経営を引き継いだ若月兄妹が借金で孤児院の土地を取りあげられそうになったことから「虎の穴」に送るファイトマネーを使ってしまい、そのため「虎の穴」から裏切り者として命を狙われることになります。
  直人は反則をやめ、タイガーマスクとして、「虎の穴」の送り込む刺客と戦いながらレスラーとして成長していきます。

 本作品が「あしたのジョー」や「巨人の星」と違うのは、主人公が戦う目的が明確に金を稼ぐことにあります。もちろん、直人は自分がぜいたくするために金をかせぐのではありません。両親をなくした不幸な子供たちがよい生活を送れるように孤児院に寄付するのが目的です。
 今ならなぜそこまでするのかという疑問が出そうですが、その時代ということなのでしょう。
 金銭にはシビアでも卑しくない。他人のために自分が傷ついても身体を張る。タイガーマスクがファンを引きつける理由のひとつはそんなところにあると思います。

 次々と送り込まれる「虎の穴」の刺客と戦いで直人はウルトラタイガードロップ、ウルトラタイガーブリーカーという必殺技を編みだし刺客を倒していきます。
 直人は当初金を稼ぐための戦いでありましたが、そのうち「虎の穴」から自由になるための戦いと変わっていきます。
 当初孤独な戦いをつづけていた直人ですが、そのひたむきさを周囲が理解するようになり、だんだん理解者が増えていきます。
 賞金目当てで参加した覆面ワールドシリーズで日本プロレス界のエースジャイアント馬場がグレートゼブラとして助っ人にきます。馬場は「金目当てだけで、あれだけの戦いが出来るはずがない。なにか理由があると思った。」と助っ人に来た理由を語っています。
 そして、「虎の穴」の同期生で、一度は刺客として戦ったミスター不動こと大門大悟、同じく、「虎の穴」の刺客として戦ったイエローデビルことケン高岡と「虎の穴」に反旗をひるがえし共に戦う仲間も増えていきます。

 タイガーマスクのおもしろさのひとつに敵役悪役レスラー養成場「虎の穴」の存在があります。原作者がイギリスのレスラー養成場「蛇の穴」からヒントを得たという組織は、直人が戦うことを子供にわかりやすくするのにこうかがありました。
 現在なら児童虐待と確実に言われる荒唐無稽な悪役養成訓練風景と営利組織であり、組織維持のためにシステムを破壊する裏切り者を許さないというリアル感のミスマッチがおもしろく、直人と戦う悪役レスラーの個性も充分楽しいものでした。
 組織に幹部がおり、覆面で顔を隠している。組織内で階級があり、出世競争の抗争がある。そして、常に指令を出す覆面をかぶった3人の幹部。直人抹殺のため覆面を取ると「虎の穴」の三大レスラー、力のビッグタイガー、スピードのブラックタイガー、反則攻撃のキングタイガーという演出は当時非常なインパクトを残しました。
 そして、首領格のキングタイガーを倒した後に3人の幹部よりさらに強いタイガー・ザ ・グレートの登場。など後年の特撮作品にもつながる部分もみのがせません。

 さて、本作品で脇役といえば、若月兄妹と健太がすぐ思い浮かびます。かつて直人と生
活しており、孤児院の経営に苦心し、妹のルリ子は直人に好意をよせています。
 健太は、普段の三枚目的な行動から直人を軽蔑しており、同一人物と気づかずタイガーマスクにあこがれています。3人ともなぜ、直人がタイガーマスクではないかと疑門をもたないのか。タイガーマスクの七不思議の一つでした。
 そして、登場回数は少ないながら目立つのは「虎の穴」のマネージャーで、直人に迫るミスターXでしょう。シルクハットに片眼鏡、片手にムチを持ち、プロレスラーのマネージャーというより、サーカス団の団長と言ったほうがぴったりします。
 「虎の穴」出身レスラーからファィトマネーの上納分を取り立てる役を担っており、裏切った直人に執拗に迫ります。覆面ワールドシリーズではレフリーも務めるなどなかなかの活躍ぶりです。しかし、実は「虎の穴」の地位はそれほど高くなく幹部から直人の処刑が進まないことを責められておろおろしています。会社における中間管理職なのでしょう。
 最後は直人を事故に見せかけて殺そうとし逆に命を落としてしまいます。組織の命令に従おうとしたXの最後は哀れさを感じます。

 理解者が増えてきた直人ですが、「虎の穴」との戦いは壮絶を極め、大門はタッグマッ チでの負傷から亡くなり、ケンは負傷でリタイア。結局直人はひとりで戦い抜くことになります。
 「あしたのジョー」や「巨人の星」が比較的原作に忠実に話を進めているのに対し、本作品は途中からテレビまんが独自の路線を進むことになります。
 原作のラストは、直人がタイトルマッチに向かう途中で子供を助けようとして、車にはねられタイガーマスクであることを周囲に悟られないようにマスクを川に捨てて息絶えるというものでしたが、本作品ではあえてラストを替えています。
 「虎の穴」は、直人への刺客を使い果たし、ついに組織の威信をかけて、ボスであり、最強の刺客、タイガー・ザ・グレートが自ら直人に戦いを挑みます。
 戦いの前に小細工をしたXは、亡くなり、直人はこの戦いに勝て ば「虎の穴」から自由になれるというラストバトルにふさわしいものでした。
 直人は必死に挑みますが、「力」、「技」、「反則攻撃」を兼ね備えたグレートの前に必殺技ウルトラタイガーブリーカーも簡単に破られ窮地に追い込まれ、グレートの反則攻撃でマスクをはぎ取られ素顔をさらしてしまいます。
 自分がタイガーマスクであることが若月兄妹や孤児院の知られてしまった。直人の中で何かが変わり、封印してきた反則攻撃でグレートに反撃します。歯止めのきかなくなった直人は馬場と猪木が止めるのも聞かず、反則攻撃を続け、ついにはグレートは落下してきた照明装置の下敷きになってしまいます。
 グレートが倒れ、「虎の穴」は壊滅したものの、正体を知られた直人は、誰にもわかれを告げずに日本から去っていきます。反則攻撃を使ったことに悔いは残したものの「目的をとげるために時には手を汚さなければならないことがあることを子供達もわかってくれるだろう。」との思いを残して。
 これほど壮絶なラストは当時見ていて予想できませんでした。個人的には原作とちがったとはいえ孤独な戦いを続けるタイガーマスクにふさわしいラストだったと思います。

 本作品は、なかなか全話のビデオ化がなりませんでしたが、最近DVDで全話が発売されたようです。特訓シーンや主人公の戦う理由について、現代では違和感がありますが、再見する価値は充分あるでしょう。
 現在は、マスクを置くとゴトッと音がする。口が開いているのに顔が見えない。そして、標準語を話すジャイアント馬場などお笑いの対象で語られるのが多いのが残念です。

 第4回はこれで終了です。みなさんからの感想をお待ちしております。


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第3回 ピュンピュン丸とギャグのタイミング

第2回 デビルマンとヒーローの孤独

第1回 ルパン三世と原本との関わり方   


ソーハイプロフィール

 1961年東京生まれ、現在は地方に在住中の出張の多い勤め人。小学校3年生のときの家の建て直しで、集めていたソノシートを親に棄てられ、社会人になってから当時のテレビまんが、特撮番組の主題歌を集めるようになる。その数、約300枚。
 テレビまんが、特撮番組に関しては、昭和51年以降はほとんどわかっておらず、もっぱら、自分の見ていた番組(特にマイナーなもの)を主に記憶を頼りに執筆している。
 野菜ジュースと鯨の刺身が好きで、他の趣味は、プロ野球の歴史調べ、ジョギング。

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