脇役劇場

 みなさん、こんにちは、ソーハイです。だいぶんごぶさたしていましたがようやく書き上がりました。今年もよろしくお願いします。

第3回 ピュンピュン丸とギャグのタイミング


 さて、第3回は、ピュンピュン丸について書きます。昭和30年代生まれの方々にはかなりの知名度がありながら書籍やインターネットでも断片的にしか語られていないようです。
 しかし、そのおもしろさは色あせていないといえます。では作品について書いてみましょう。
 
 甲賀少年忍者のピュンピュン丸は、弟のチビ丸とともにあらゆることを解決する「なんでもOK事務所」で働いています。ふたりは事件の依頼があると所長の指示で事件解決に向かいます。しかし、半人前の上にドジなので毎回珍騒動を巻き起こす。というのが話のパターンです。

 本作品は、時代劇でありながら現代の小道具が登場するナンセンスコメディとして、同時期の「珍豪ムチャ兵衛」とともに知られています。
 ムチャ兵衛が「実現不可能なことに全力をつくす、無償の愛」を描いた人情喜劇であるのに対し、ピュンピュン丸は、主人公も含めて、欲にかられて事件を起こす人間のバカバカしさを描いたドタバタ喜劇といえるでしょう。

 本作品のおもしろさのひとつに個性的な登場人物があげられます。ドジだが明るく元気な主人公ピュンピュン丸、チビ丸は、ビエーと泣けば周囲を破壊する「こまく破り」を持ち、所長は、金の計算に抜け目なく、ヒゲで機械を操作しています。
 そして、この作品のヒロインは伊賀の女忍者さゆりとケメ子のふたりです。
 さゆりは、作品の中でただひとり事件を冷静にみており、欲にかられることがないため、事件を解決する役が多いなど恵まれているのに対して、ケメ子は、欲にかられるのはひたすらピュンピュン丸のためで、しかも、全く受け入れてもらえず、たまに、捨て子を育てても実の母に返さざるえないなどその行動は報われないことがほとんどでした。
 いくら熱愛してもピュンピュン丸には受け入れてもらえない。ケメ子の行動はおかしくて悲しいものがあります。当時はこういう報われないボケ役の女性キャラクターは珍しい存在でした。ケメ子が悲惨に見えないのは、いつでも前向きな姿勢で明るく生きているという描き方が大きいでしょう。作品の中の一種の癒しでした。

 さらに毎回登場するゲストキャラクターも個性的です。
 怪人三面相、怪盗ロパン、七色頭巾、あんみつ剣士、くもがれうるさいぞう、などのおなじみキャラクターのパロディを始め。怪獣ゴロゴロン、大福アンコ守、スルメイカ衛門、そして、♪ニコニコ、ニコニコ日光からやって来た♪と歌いながら登場するニコニコ忍者はかなり強い印象を残しています。また、たびたび戦うことになるフウマンを首領とする宿敵風魔忍群との戦いも大笑いでした。これらのキャラクターはみなさんの心に残っていることでしょう。

 では、本作品のおもしろさはキャラクターだけかといえば決してそんなことはありません。一過性ブームの盛衰を皮肉った「怪獣ゴロゴロン」、本人達そっちのけで繰り広げられるお家騒動のバカバカしさを描いた「どっちもどっち」、交通戦争の現代でなにより怖いのは幽霊でも妖怪でもなくダンプカー だったというオチがつく「幽霊だよーん」、改造人間の悲哀をギャグ化した「ドテドテサイボーグ作戦」など脚本も優れています。また、宿敵風魔忍群との秘密兵器の設計図の争奪戦を描いた「史上サイテーの作戦」、依頼者にだまされて骨折り損のくたびれもうけに終わる「野球忍者と海賊ちゃん」、エスカレートする忍法合戦が見どころの「怪盗スルメイカ衛門」は、今見ても充分楽しめると思います。
 個性的な登場人物にそれに合わせた脚本、そして、時代劇を超えて使われる現代の小道具の数々、これらが合わさり本作品をおもしろくしているといえるでしょう。

 本作品で目を引くのが小道具やギャグを繰り出すタイミングのうまさです。作品中で時代劇らしく大名行列が通っているとその横を三輪自転車が通り過ぎるといった描写や事務所への依頼は電話、依頼人から写真を渡され仕事を引き受ける。事務所との連絡はトランシーバー、料金メーター付きの乳牛など使い方をまちがえれば話をこわしてしまう道具を実にうまいタイミングで繰り出しています。
 また、大名からの依頼で姫の警護を引き受け、期待して部屋に入ると姫は外国人タレントの写真をひろげミニの着物でゴーゴーを踊っており、がっかりするピュンピュン丸とチビ丸。秘密指令を受け敵の目を欺くため、山越えルートを取り吹雪、岩くずれに遭いながら苦心の末に山を登りきると頂上では幼稚園児がピクニックに来ており弁当を広げていた。あるいは、風魔忍群との戦いに空からの攻撃が必要と言って、古新聞を集め巨大な紙飛行機を折らせ、「金がかかっていないからこの飛行機は0戦(0銭)。」といいきる所長、紙飛行機相手に弾を使うのはもったいないと言って巨大な水鉄砲を持ち出して打ち落とすフウマン。など時代劇と現代の小道具、シリアスとギャグを切り替えて繰り出すタイミングは絶妙でした。
 そして、危機になるとチビ丸が「ぼく泣くモン。泣くモン。」と言って「こまく破り」で周囲を破壊し、ケメ子に追いかけられて、ピュンピュン丸がいやがって逃げ回るのもお約束で楽しみの一つでした。

 さらに、劇伴の使い方も見事です。一対一の対決シーンになるとそれまでののどかな劇伴から東映忍者物でおなじみのシリアスな劇伴に、また、大火事など危機的状況になるとサイボーグ009で使われている劇伴に変わります。 そして、事が済むと元の劇伴に戻してオチがつく。ギャグ→シリアス→ギャグに切り替えるタイミングが実にうまいのです。

 ここまで書いてきましたが本作品のおもしろさはとても文字では表せません。作品を見てもらうのが一番でしょう。現在でも大いに笑えると思います。

 こうしたナンセンスコメディは、意外と作るのが難しいらしく、後の作品でもほとんど見あたりませんが、ぜひ、現代の手法で新しいナンセンスコメディを制作してもらいたいものです。

 本作品は、本放送時途中で打ちきりになり、2年後に残りが放送されるなど不運な作品でしたが、カラーであったことが幸いして、再放送の機会が多く(特に夏休みの放送はお約束でした。)幅広い年代層に知られています。
 東映動画のカラー企画作品の第一号でありながら、記載の記事も少なく、ソフト化もされていないようです。ぜひ、ビデオ・DVD化してもらいたいものです。

 第3回はこれで終了です。みなさんからの感想をお待ちしております。


ご感想を《掲示板》 もしくはメールにてお寄せください。

| Prev | Next |