脇役劇場

 みなさん、こんにちは、ソーハイです。第1回のコラムに感想ありがとうございました。
 実はニャンちゅうさん以外の人から感想がなければこのコラムはやめるつもりでした。なんとか読んでいただける方がおりましたので、続けることにしました。引き続きみなさんよろしくお願いします。

第2回 デビルマンとヒーローの孤独


 さて、第2回は、デビルマンについて書きます。
 熱狂的な支持をするファンが目立つ原作に比べて、テレビまんがの方は少々影が薄いようですが、恐怖と美しさを持つ敵役が登場する本作品は当時としては異色で再見の価値はあると思います。

 おのれの力が正義であるデーモン族一の強さを誇るデビルマン。
 族の長魔王ゼノンから侵略の先兵として、人間界へ行くことを命じられ、偶然、ヒマラヤに来ていた不動明の身体に乗り移り、破壊と殺戮を目的に人間界にやってきます。
 しかし、ひとりの少女を好きになったことからデーモン族を裏切りかつての仲間と戦う事になります。

 デビルマンの特徴は、その孤独な戦い方にあります。仲間を裏切ったため、味方はだれひとりいません。たった一人の親友だったドランゴも刺客として襲ってきます。人間の繰り出す兵器はなんの役にもたちません。
 例えば孤独なヒーローといわれた新造人間キャシャーンでも相棒フレンダーがいますが、これだけ孤独なヒーローは思い浮かびません。
 デビルマンが戦う目的は、好きになった牧村美樹を守りたい。ただそれだけです。
 愛する少女を守るために圧倒的多数の敵に立ち向かう。普通ならデビルマンは悲壮感あふれるヒーローに描かれるところですが、あまりそうは感じさせません。
 それは、デビルマンがデーモン族一の力を誇り、一族の中でも自分の好きに生きてきており、「たまたま、人間の少女を好きになった。それがなぜ悪い。文句を言われたくない。」という描き方が大きいと思います。人間の姿の不動明が不良で自分の好きに行動している様子からもそれは明らかです。
 また、妖獣と呼ばれる敵役との戦いもデーモン族が殺戮と争いを好み、仲間意識が低いというのも戦うことにあまり疑問が出ないひとつの要因でしょう。

 デビルマンの戦いは、愛する少女を守ると同時に自分らしく生きるということといってもよいでしょう。ですから、たとえどんなに身体が傷ついても戦うことに迷いはありません。デビルマンは孤独でありながら精神的には最強のヒーローといってもよいかもしれません。
 美樹に会いやさしさを知ったデビルマンは、当初美樹を守るためだけに戦っていましたが、戦いを続けるうちに人間らしさにめざめ、美紀の周囲の人々も守るようになります。
 実際、最終回、妖獣ゴッドとの約束を破りデビルマンに戻ったのは美樹のためではなく、美樹の弟健作と美代を救うためでした。
 愛する少女を守るための孤独な戦いを続けながら人間らしくなっていく。異色のヒーローデビルマンのおもしろさはこういったところにあるといえます。

 さて、デビルマンは夜の8時という時間帯に放送されていたこともあって、どぎつい表現もあり雰囲気が暗くなりがちでした。そこで、雰囲気を和らげるために様々なギャグメーカーが登場しました。
 代表例が、明達の通う名門学園のポチ校長、担任のアルフォンヌ、デーモン族の妖獣ララです。

 まず、ポチ校長ですが、常に体面を第一に考え、妖獣の存在を信じない。それでいながら妖獣に会うとパニックに陥り、ドタバタを繰り返す。アルフォンヌや用務員の轟清彦との掛け合いは実にばかばかしく、恐怖や残酷なシーンを忘れさせてくれます。

 次にアルフォンヌは、明たちの担任の先生ですが、あるときは明に小言を言う教師、あるときは恐妻におびえるダメ亭主、あるときは妖獣に襲われてふくろただきにあう通行人、そして、あるときは、妖獣の起こす現象の解説役とポチ校長以上の活躍をします。
 また、妖獣ファイゼルの回では、影を落とされてもただひとり普段と変わらず、結果的にデビルマンがファイゼルを探しだすきっかけになっています(「影を落としてもなぜあの男は変わらなかったのか。」というファイゼルの問にデビルマンは「最初から狂っているから変わらなかっただけ。」と笑いながら答えています)。
 テーマソングとともに登場するとどんなに残酷なシーンもたちまち笑いのあるシーンに変えてしまうアルフォンヌは実に貴重な存在でした。ほとんどの回に登場していますが、最終回に登場しなかったのは残念でした。

 最後にララです。ララは、当初デビルマンを打倒をもくろみますが、デビルマンを好きになったため、デーモン族を裏切り人間界に残ることになります。デビルマンと同じく、愛のために仲間を裏切り、命を狙われる。普通に考えればララは、悲劇のヒロインに見えますが、実体はまるで違います。
 人間界に来たのは自分が美人であると自慢するためで、デビルマン打倒は二の次でした。妖獣ドドと組みデビルマン打倒をめざしますが、考えが足りないため、ドドからも見捨てられ、デビルマンからは弱すぎて相手にされず、最後はなんと精神病院に入れられてしまいます。
 脱走を繰り返すため、精神病院から棄てられるところを脱出し、再度デビルマンにいどみますが、まるで歯がたたず、泣き出す始末。処置に困ったデビルマンが「おまえは美人だ。」と行った冗談を本気にし、結局人間界に残ることになります。
 ララは、変身能力と手近な物を武器に変える能力をもっているのですが、考えが足りないため、それを生かすことができず、失敗を繰り返します。バイクに乗ってジャンプすれば川に落ち、くしゃみをすれば顔が崩れ、妖獣に追いかけられたり、捕まって木に吊されるなどひどい扱われ方です。
 常に自分の顔を気にかけ、妖獣に痛めつけられても身体より顔の復元に余念がなく、なにかあると「どうせ私はバカですよ。」と開き直る。
 こういうギャグメーカー(というよりボケ役。)の女性キャラクターは当時としては珍しいでしょう。もっとも、今ならその言動が女性蔑視と言われかねませんが。
 美樹の存在を知ってもデビルマンへつくすララの姿はおかしくて悲しいものがあります。
 初めはまとわりつくララをうとましく思っていたデビルマンも次第にララに心を開いていきました。それは、誰にも理解されない孤独な戦いを唯一理解してくれる存在だったからでしょう。デーモン族による異変をいちはやく知らせるなどデビルマンを支えていく、ララは一種の癒しだったといえます(行動はバカまるだしでしたが。)。
  テーマソングとともに登場するとどんなボケた行動を取るのかと期待させるララは非常に貴重な存在でした。それだけに突然の退場は実に残念でした。それも、妖獣マグドラーに火炎を浴び、半分身体を焼かれながら「楽しい思い出をくれてありがとう。それだけが言いたかった。」と言ってデビルマンの目前で燃え尽きるララはあまりにも悲しすぎました。
 デビルマンは、地中からエネルギーを補給して挑んでくるマグドラーに苦戦しますが、エネルギー補給のきかない宇宙に連れ出し、怒りのデビルアローでマグドラーを倒します。
 ララの最後のことばは「私死んだからバカは直った。」というボケ役らしいものでした。

 そして、最終回、ピラミッドやスフインクスを出現させ、恐竜をよみがえらせるなど奇跡を起こす妖獣ゴッドのため明は自分がデビルマンであることを美樹に知られてしまいます。美樹の目の前でデビルマンにもどる明。だが、美樹は明がデビルマンであることを信じません。明がデビルマンに変わったのをゴッドの力によるものと決めつけ元にもどすようゴッドに迫ります。美樹の気持ちを知ったデビルマンはゴッドに最後の勝負を挑みます。
 カッター、アローと両者の力は互角。ビームの撃ち合いで相打ちになり、倒れるゴッドとデビルマン。しかし、美樹の声に力を得たデビルマンは最後の力を振り絞り、全力のデビルビームでゴッドをついに倒します。
 後日、バイクを飛ばす明と美樹。どんな姿に変わっても自分への思いは変わらないことを美樹から聞いたデビルマンは、どんなことがあっても美樹を守ることを新たに決意するところで話は終わります。

 最終回のタイトルは、「妖獣ゴッド 神の奇跡」でしたが、明が美樹の目の前でデビルマンに戻ってもそれを信じないことのほうが奇跡といえましょう。
 この演出は、今の世代の人が理解するのはむずかしいところですが、なぜ、報われない戦いを続けるのかという答えになっています。
 まさに、愛する者のために戦い続ける孤独なヒーローらしい終わり方でした。

 脇役のうまい使い方など見るべきところがあるにもかかわらず、知名度のわりには人気が高くないようです。ビデオも発売されていることですし、もうすこし評価してもよいのではないでしょうか。

 第二回はこれで終了です。みなさんからの感想をお待ちしております。


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第1回 ルパン三世と原本との関わり方


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