はなぞの大学

学長:高卒★エスパー


入学説明会「21世紀を迎えるにあたって」

 本朝発祥の特撮怪獣文化を学ばんとする皆さん、私が本学府学長の高卒エスパーです。
 名前からも判るように先生はハーフですが怪獣を愛する気持ちは皆さんと変わりありません。
  今日より皆さんと共に世界中の「怪獣!・怪人!・宇宙人!」…この3つは本学の校訓でもありますが…
  …とにかく世界中の怪獣文化について共に学んで行く所存ではあります。生徒の皆さんも本学のカリキュラムを抜け目無くこなし、立派な怪獣博士となって下さい。

  では、始まり始まり〜ィ♪


 さて皆さん、西暦2000年の今年、話題になった"ミレニアム・ベイビー"。 彼らが無事に成人式を迎える頃は西暦何年でしょう?
 そうです、2020年ですね、そして2020年といえば"ケムール人"です。
 ケムール人はTBS系で放送された円谷プロ作品『ウルトラQ』に登場した怪人です。スラリとした長身にフサフサとした襟巻き、ギョロギョロと周囲を見回す半ば飛び出した目玉 、顔にはその目玉が走る誘導路のように白い窪みが十字に走り頭の天辺にはタコの口のような触手(?)がニューっと伸びた姿をしています。
 では姿形以外の細かなことを秋田書店から'68年に発行された『カラー版/怪獣ウルトラ図鑑』をテキストにしておさらいしてみましょう。

★「誘拐怪人ケムール人(Kemur)」

  1. 背丈30メートル、体重1万5千トン。
  2. ケムール星生まれの悪質宇宙人。
  3. (頭頂部の管状触手から)物や人間を消してしまう"消却液"を出す。
  4. 相手の考えが解るテレパシー能力に優れている。
  5. チチンネル光波に弱い。

注)カッコ内、講師注

 本朝怪獣文化の開祖・大伴昌司先生(Ohtomo Shoji/1936→1973年・享年36歳)は観覧車 を持ち上げたケムール人の写真を添えてこの様に研究の成果を発表されたのですが、" チチンネル光波"は間違えですね、そんな菊池 寛みたいな光波はありません。正しくは"Xチャンネル光波"です、誤植でしょうからテキストをお持ちの皆さんは訂正して下さい。

 さて、このケムール人ですが色々と不明瞭な点が多い怪人でもあります。おそらく『ウルトラQ』中でも屈指の知名度と人気を誇る怪人にも関わらず、意外にハッキリしない点が多いのです。そこが本講の眼目でもあるのですが、その点を語る前に先ず" ケムール人が何をなしたか?"について再確認しておきましょう、先生はこの為にまたヴィデオを観てしまいました。

 お話は航空自衛隊の司令室から始まります。オヤオヤ、何かお取り込みのようですよ
 …(BGM:チャラララリラ〜♪)


【物語】

 日本上空を侵犯する巨大なUFOを追撃するべくスクランブル発進した空自ジェット哨戒機、防空レーダーにハッキリ捉えられたUFOに緊張する航空自衛隊指令室。だがその緊張を破ったモノはUFOに接近したジェット機が爆発する音だった…
 責任者である天野二等空佐(小林昭二)は哨戒機行方不明事件の査問会上UFOの存在を主張したが上層部はこれを一笑に付す。

 ここで石坂浩二のナレーション:「…しかし皆さん、皆さんは彼を信じるでしょう…
 レーダーには確かに妙な物体が捉えられていたし、現にジェット機が見えない"何か" に衝突するのをご覧になったわけですから…」オォッ!!カッコエエっ!と思う間もなく画面 はザラっとした反転ネガ映像となりそれに『ウルトラQ』のメイン・テーマがかぶる、やっぱカッコエエっ!先生は年甲斐もなくハッスルしてしまいます。

 場面は変わってアウトドアな人々の"蒸発事件"が頻発します、ただの蒸発ではありません本当に"消える"んです。飛び込み台からジャンプした青年は着水寸前に消え、ロッジで牛乳片手にくつろぐ青年もグラスを虚空に残して消える。ゴーカートを楽しむオネーちゃんもシュルルルルっと消えちゃいます、これを目撃したのがユリちゃんこと新聞記者・江戸川由利子(桜井浩子)です。ユリちゃんは人間蒸発の特ダネをデスクに報告しますが信じてもらえません。
 傷心のユリちゃんはBFのセスナ機パイロット・万城目 淳(佐原健二)が勤める"星川航空"に油を売りに行きましたがここでも信じてもらえません、挙げ句の果 てに淳の後輩・戸川一平(西条康彦)からはSF小説の話扱いされる始末。
 そこに現れたのが冒頭の天野二佐、淳君の友達である彼はセスナ機でレーダー上からジェット機が消えた空域を再探査すべく星川航空へやって来たのでした。
  プリプリ怒るユリちゃんを残して飛び立つセスナ機、ところが問題の空域で大変なことが起きます、なんと『ウルトラQ』の主役でもある万城目 淳が消えてしまうのです……
 やがて一連の怪事件は遠い未来の時間をもつケムール星から地球へやって来た怪人ケムール人(古谷 敏)の仕業であることが判明、どうやら彼らは500歳を越えた自らの身体の代わりに若い人間の身体を狙っているらしい、つまり一平君の話していたSF小説の内容=神田博士がXチャンネル光波を用いてケムール人と交わした交信の記録は事実であったコトが判るのだが……
  果たして残された者達で恐るべきケムール人を追い払うことは出来るのか?そして消えた人々は戻ってこれるのか?


 てな調子で後はご覧になってのお楽しみ、細かなストーリーを実際に楽しみたい方はヴィデオ等でご覧下さい、スリルとサスペンスにユーモアが程良くブレンドされた好編ですよ。
 ただし『ウルトラQ』はモノクロ作品であることをお忘れなく、ちなみに" 謎のヒーロー・ウルトラQ"などと云う者は出てきませんその話はウソ!そんな毛が3本生えていそうなキャラクターは円谷プロに所属していません。

 一通りケムール人についておさらいしましたので本題に戻りましょう、"ケムール人・99の謎"… ウソですよ、99もありません、取り上げるのは2つの疑問です。先生は いま酔っぱらっているので嘘をついてしまいました。
 では気を取り直して…… 謎とはナンでしょう? 実はそれはケムール人そのものにあるのです。

 先ず代表的なのが「ケムール人は未来の時間をもつケムール星からやって来た」という表現です、これは劇中もハッキリ語られるのですが、そもそも"未来の時間をもつ星 "とは何なのでしょう? この表現では「未来から時間を超えて来た」のか「人類の歴史を越える長い歴史をもつ文明圏から来た」のか、あるいはその両方なのか、判らないではありませんか。
  先生は数々の怪獣文献に目を通してきましたがこの問題に明確な所見を表した研究にはお目にかかったことがありません。
  冒頭に現れるUFOを劇中"空飛ぶ円盤(flying saucer:UFOの一般的古語表現)"と表現したことから一般 にケムール人は宇宙人にカテゴライズされていますがそれだけで断定してしまってよいモノでしょうか?

  そして第2の疑問、頭頂部に銃弾を受けたケムール人は人間大から怪獣のような巨体へと巨大化するのですがいくら何でもその様な事があり得るのでしょうか?血液型ABのコマカイ先生は長いことこれらの疑問について研究を続けてきた結果 、以下のような仮説を導き出しました。

 先ず第一の疑問『ケムール人は未来人?宇宙人?』についてですが、ケムール人には"未来人"ないしは"未来宇宙人"というカテゴリーこそが相応しいのではないかと思います。
 何故ならば人間の身体を直接再利用しようとしたところをみてもおそらくは遺伝形質的に地球人に極めて近い身体構造を有したある種の"未来人"であることは可能性大で、その点から見ても前記の様に考えるのが妥当であるからです。そして、もし論理の飛躍を許すならば"人類の未来の姿"とするのも面 白いでしょう。

  次に第2の疑問『ナンで大きくなるの?』、つまり"巨大化のメカニズム"についてですがここではケムール人の持つ"消却液"に着目します。
  ケムール人は後のウルトラ怪獣・ウルトラ星人のような電磁波エネルギー系の攻撃能力を持っていません。代わりに持っているのがあたかも粘菌のように運動するゲル状物質・消却液です。劇中では神田博士の研究によって消却液が「ケムール人の意思力によって運動するエネルギー体」であり、任意の物体を任意の場所へ瞬間的に運び去る能力を持っている、と説明されています。
 この説明を聞くとあたかも消却液がケムール人の作り出した"道具"であるかのようですが実はココがポイントです。先生はこの消却液こそがケムール人本体ではナイカ?と思うのです。
 つまり、進化の過程で"超感覚能力(E.S.P)"を修得したケムール人達は進化の果 てに至って意思力のみを用いて運動する究極生命体となったという仮説です。
 SF小説ではよくあるアイディアですが、先生は萩尾望都の『スター・レッド』で初めて読みました、とっても幸せモトちゃんです。
  確かに念動力(PK)その他の超感覚が発達すれば身体形状は意味を持たなくなります。それは英知の殿堂・脳髄にあっても同様です、早い話が思考力を宿す"意思"さえ存在していれば記憶は外部に記録しても良いわけです、そうすれば脳はずっと小さくて済むでしょう。ちょうどインターネットから得たデータをPCで処理するようなモノだと言えます、そう…ネット上のPCという表現は判りやすいかもしれません。
 つまり、地上に派遣されたケムール人=1端末 が活動不能に陥った為に冒頭で哨戒機を破壊した巨大UFO中の仲間消却液=ケムール人 仲間=他の端末が次々と活動不完全ケムール人ヘ繋がっていき巨大化・強大化していった。これがケムール人巨大化メカニズムの仕組みではないでしょうか、先生は森総理並みの脳の持ち主なのでカナリ適当に考えていますがイメージは解りなさい(命令形)。

  ちなみに現在では「巨大化するモンスター」という表現イメージはごくごく一般 的な 認知の中にありますが、実は劇中で何の原理説明もなく巨大化する宇宙人ないしは怪人というイメージは怪獣文化史上ケムール人が初めてなのです。
 『ウルトラQ』の他作品中にもセミ人間(cicadaman a.k.a chilsonian)ら5種の"異人類"達がいますが、いずれも巨大化プロセスは持っていません。実にケムール人はこの道の"パイオニア" でもあると言えるわけです。

 以上の2疑問が解ければケムール人の全てを理解したも同然です。
 「パトカーに走り勝つ500歳の老人がおるかぁ?」という疑問には「あれは、いわばケムール人の乗り物。ガンダムの原理じゃよ」と答えればよろしい、「口もチンコも無いジャン?」と言われたら「着る物にそんなモノ付けるカッ!ての」と済ましておれば良い。少し知恵の回った小倅が「消却液が正体なのは解ったケド、容れ物まで大きくなるのは納得イカねぇ」と生意気抜かすなら「オトナの世界にはネ、全身ラバー服とかもあるんだよ…」と諭してあげればよろしいでしょう。


 さてさて、では本講の締めくくりとして以上の仮説に立脚して見た"ケムール人、その怪獣文化史上の存在意義"について講義しておきましょう。

 このケムール人の物語は"千束北男と金城哲夫"、二人の脚本家によって作り出されました。
 金城哲夫(Kinjo Tetsuo/1937年→1976年・享年37歳)は円谷プロ生え抜きの脚本家であり同プロ文芸部の要をなした方です。円谷プロ初期作品群の根幹は彼の力によるところが多い、と憶えておいて下さい。
  では、もう一人の"千束北男"とはどんな人でしょう?実はこの人、当時TBSから出向してきていたディレクター・飯島敏宏さんなんですね、つまり本作を演出した飯島敏宏監督です。

 当時、飯島監督は「東京都大田区・北千束に住んでいた」のでこの様なPNを使っていたのです。飯島監督の名前をご存知ない方は、「後に『それぞれの秋』とか『金曜日の妻達へ』を作った偉い人」と憶えておいて下さい。
 飯島監督、怪獣文化史的には『ウルトラマン』で宇宙忍者バルタン星人を創造し、『ウルトラセブン』でインコみたいな顔をして、ヤルことに抜け目の無い分身宇宙人・ガッツ星人を演出した方です。 いずれも光学合成技術を駆使した鮮烈なイメージを画面に打ち出す事に成功しています。ことにバルタン星人においてはケムール人の不気味で不思議なイメージを更に発展させ(脚本も自ら執筆)ウルトラ宇宙人のパブリック・イメージを決定付けるという偉業を成し遂げました。

 そんな飯島監督が作り上げた本作では、『ウルトラQ』に続く『ウルトラマン』においてムラマツ・キャップを演じる小林昭二さんが天野二佐を演じ、ウルトラマンその人を演じた古谷 敏さんがケムール人を演じています。

 内容的には劇中の"交信相手の宇宙人が地球にやって来てしまう"という状況設定が、『ウルトラQ』企画上で特に参考とされたと思しいMGM製作TVシリーズ「アウター・リミッツ(ウルトラ・ゾーン)/Outer limits(1963)」第1話『宇宙人あらわる/the Galaxy being』と"反転ネガ・イメージの活用"を含めて全く同じ、さらには『ウルトラQ』の前々身にあたる特撮TVシリーズ企画『WOO(ウー/未製作)』の主役が"知性に富んだ不定形宇宙アメーバ"だった。
  つまり当時の円谷プロ製作陣は視聴者に対して斬新な宇宙人像=不定形生命体というアイディアをもってアピールしようとしていた、という事実が思い起こされます。

 つまり、ケムール人が登場するウルトラQ第19話『2020年の挑戦』は"怪獣文化史上、初の本格TVシリーズたる『ウルトラ・シリーズ』の原型と未来型のイメージが放り込まれたサラダ・ボウル"であったと言えるのです。
 全ての始まりを記録した最初のゲート、それが『2020年の挑戦』なのです。


 さて、…皆さん、次の休日に遊園地へ行く予定はありますか?あるいはお住まいの窓から"   観覧車"が見えますか? ケムール人のおヘソの辺りがおおよそ観覧車の天辺の高さになります。
 観覧車を見つけたときは是非、ケムール人の大きさを想像してみて下さい。怪獣の大きさを実地に想像してみる、体感する。その時に得た不思議な感覚、感動それが怪獣文化を楽しむ第1歩なのです。

 では、これで本日の講義を終わります。


【今日のポイント】

  • ケムール人はウルトラの基本、スタートラインだ。
  • 怪獣の大きさを体感してみよう。

【募集】

  • 怪獣文化を広く広めるために講師を募集します、熱烈なる学究の徒よ我が学府に集え!
  • 女性講師を広く募集します、やっぱイイよね。
  • その他、講義内容については随時募集、Eメール等でtulip-j3@lycos.ne.jpまで、どうぞ。  
  • 女性講師を大募集します!
  • ホントに、他はどうでも良いから女性講師募集中!
  • 先生は一部でオカマなので恐くありません。
  • 恐くネェって言ってんだろっ!!
  • 恐くないワァ♪クネクネ

カット:ニャンちゅう


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