唇をかみしめて
作詞・作曲 吉田拓郎

奥田民生

 

 奥田民生の『悲しくてやりきれない』は、あまりに悲しくてやりきれなかった。
 『唇をかみしめて』は、一撃で気絶させられそうなくらい重く太かった。
 まずは彼のカバーのセンスに脱帽。

 世の中にはとんでもなく凄い曲がある。別格の曲。
 『唇をかみしめて』は、まさに別格の歌。何もなしに聴くには、かなりヘビィだ。

 吉田拓郎によるこの歌は、82年に片面がツルツルのシングル盤で発売された。カップリング曲なしで400円(当時のシングル盤は700円)。それがお買い得なのかどうかはわからないが、買って損のない楽曲であることは確かだった。
 “広島二人組”という、拓郎と青山徹によって編曲された全編広島弁のこの歌は、哀しみ、憎しみ、やりきれなさ、そして愛情で溢れていた。震えた。

 その直後、山本山田(山本コウタローと山田パンダによるユニット)の『旧友再会フォーエバーヤング』がリリースされる際拓郎は、
 「『唇をかみしめて』の延長にある歌。泣ける」
 と宣伝していたが、当時大学生だった僕は『旧友再会フォーエバーヤング』にひとつも泣けなかった。
 別格の「『唇をかみしめて』の延長にある」と聞かされ、期待が膨らみ過ぎていたところに、あの飄々とした歌。。。 泣けない(爆)

 が、歌詞の通り「結婚してから10年に」自分が差し掛かると、この歌が無性に泣けるようになってくる。
 今なんて、酔って『旧友再会フォーエバーヤング』を聴くと、拭っても拭っても涙がボロボロこぼれ落ちてくる。

 話を奥田民生の『唇をかみしめて』に戻そう。
 なぜ彼がこの歌をカバーしたかは知らない。ただ単に同じ広島出身とか、拓郎と同じ高校に通っていたとか、顔が似ているとか(笑)、そんな理由なだけではない筈。
 何でこの歌かな…。
 そんな想像を掻き立てるくらい、奥田民生の歌唱には気持ちが込められ、そしてそんな想像が邪魔になるくらい、ありきたりじゃない熱が湧き上がっている。

 レスポールの弾き語り。
 そこにドラムとベースが絡むだけのシンプルな編成。
 ど派手な青山徹のギターと比べれば、あまりに素っ気ないアレンジだけど、全然負けてない。もちろん勝ち負けじゃない。勝ち負けじゃないんだけど、この歌は誰にも負けてない。

 あっぱれ。

 


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