健'z Ken'z
健'z

 

 ん〜〜、これはやられた。ずるい。きたねぇ〜ぞ、おい。でもいい。はぁ〜。いいよ。すんばら。

 昨年末は忙しかったからね〜。こんなすんばらがリリースされていたことすら知らなかっただよ、私ゃあ。それが元旦にね、退屈しのぎに近所のすみやを覗いたらポツンと一枚だけこれが置いてあっただよ。まぁ間違っても見ただけで衝動買いさせるようなジャケットぢゃないんぢゃけど(爆)、どこからどう見ても健太さんでしかあり得ないおっさんがギター抱えてワシのことを呼んでおってな、ふと手に取り、ひっくり返して見てびっくり!!! そのまま私ゃあレジに走りました。んなに慌てなくたって、他にこのCDを横取りしようなんて酔狂はいないって、この片田舎のすみやに。でも走った。

 『VANILLA SKY』『MELT AWAY』『I JUST WASNT MADE FOR THESE TIMES』『BABY'S REQUEST』『EVERY NIGHT』『HEART OF THE COUNTRY』『SO BAD』『JUNK』、ポール・マッカートニーとブライアン・ウィルソンのみからの絶妙な選曲。しかもそれを黒沢健一のボーカルと萩原健太のアコースティック・ギターのデュオ健'zがカバー。それだけで期待感っつーか、何か一言云ってやりたい感が高まる(笑)。

 まずね、ギターがいい音で録れてる。
 数少ないジャケ写を見ると、マーチンなのかな? これは。でも、ギブソンっぽい低音の箱鳴りが、やたら気持ちいい。ざくっとした弦鳴りもギブソンっぽい。
 これが押尾コータローだったらね、悔しくない。もう土俵が違うから(爆)。それがこの健太さんのギターは悔しくてしょうがない。もぉ〜こういうのがやりたかったんだよぉぉぉぉぉ、オレもぉぉぉぉ!と、体中にいてもたってもいられない虫が走り抜ける。実にいい味出してるからなおさら。

 そして黒沢健一のボーカル。
 うまい。うますぎる千石饅頭 …というか、ホントにこの人の声は、ポールやブライアンを歌うのにフィットしている。そして、健太さんのギターにフィットしている。

 これは最強のトリビュート・アルバム。『Let It Be...Naked』よりよっぽどトリビュートしていると云ったら褒めすぎか。
 でもこのアルバムを聴かせた人、みんな自分から「いい」って云う。僕が薦める物は大概他人にはハズレなんだけど(笑)、クルマの中で、或いはお正月のテレビも観ないでこのCDをかけて酒を飲み続ける間、、、 来る人来る人にこのアルバムを聴かせ、それがみんな「いいね」って云う。ポールやブライアンがなんだかも知らない人も「誰がやってるの?」って訊いてくる。
 この楽曲を採り上げればいいに決まってるんだけど、勿論これは健'zの手柄。素敵なことだね、これは。

 それはね、これが単なる“企画モノ”のトリビュートじゃなく、ポールとブライアンを心から愛し、知り尽くした二人がカバーしたからこそ成し得た必然だからじゃないかな。
 しかもそんな愛や尊敬や拘りを決して大上段からじゃなく、自分の想いと等身大のところで表現しているから、「悔しい、やられた」ぼやきながらも、躯の髄から癒されてしまう。

 しかしつくづくどのメロディも秀逸。大作でしか「天才」と称してもらいにくい天才は、実はこうした曲たちにも天才ぶりを発揮しているのが証明されている。彼らがこの曲を思いつくままを鼻歌でこしらえてしまったのか、ひとつひとつを細かく拘りながら編んでいったのかは知らない。
 ただ『VANILLA SKY』『MELT AWAY』『I JUST WASNT MADE FOR THESE TIMES』『BABY'S REQUEST』『EVERY NIGHT』『HEART OF THE COUNTRY』『SO BAD』『JUNK』という奇跡のように美しいメロディが遺されていることだけが事実。勿論、他にもたくさんの素晴らしい歌がある。
 健'zのアルバムは、ややもすると通り過ぎてしまう美しさを、立ち止まらせるように再認識させてくれた。『VANILLA SKY』と『SO BAD』と『JUNK』が一緒に入ってるのもなんか凄い。

 『巨人の星』で、わが子の大リーグボール1号が花形に打ち砕かれるシーンを観た一徹が、「この花形のはれのすがたこそ、ほんとうのかっこよさよ」みたいなことを呟く。真の野球人なら誰であれ、最高の野球をしめしてくれたことにひたすら感動し、しびれる… と。しかし「できうれば、わが子に見せてほしかった」と天井を見上げる。
 あ〜、できうれば自分でやってみたかった、こんなカッコイイこと。

 


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