きりきり舞い きりきり舞い
作詞:阿久悠 作曲:都倉俊一

山本リンダ

 

 『こまっちゃうな』('66)の一発屋的ヒットの後、鳴かず飛ばずだった山本リンダを、その6年後大ブレイクさせたのは阿久悠と都倉俊一のコンビだった。
 このチームは後に、ピンクレディーも大成功させている。

 低年齢層をもターゲットにしたこの戦略で、『どうにもとまらない』('72)、『狂わせたいの』('72)、『じんじんさせて』('72)、『狙いうち』('73)と次々にヒットを繰り出していたリンダ(馴れ馴れしい(笑))だが、当時低年齢層まっ只中だった僕は、な〜んの関心も示さなかった。正直、少しもいいと思わなかった。
 が、続く『きりきり舞い』('73)には、きりきり舞いさせられた。

 イントロの「チュ〜チュ チュルチュ♪」の甘い声と甘いメロディ。伴奏のピッコロのような音(オルガン?)が同じ旋律をなぞり、リンダの声に溶け込んでいる。
 4つ刻みのドラムに、8ビートでベースが重なってくる…。この8ビートがね、規則正しくズズズズズズズズ♪と刻まれているのに、全体的に緩い感じがするのは、山本リンダのボーカルが醸し出すトーンからか。

 このボーカル、ダブル・ボイス(風にコーラスかフランジャーをかけてるのかな?)になっていて、それまでのギンギンギラギラのリンダが、とってもソフィスケイトされてる。全体に囁くようなトーン。
 戦略的にはお色気を表現していたのかもしれないが、“お色気”にまだ目覚めていなかった僕はそれよりもその声の滲みと、Tレックスのような旋律に、完全に惹き込まれていた。

 「Tレックスのような」と書いたが、年代的にみてもあながちハズレてないかもしれない。都倉俊一のアタマには、マーク・ボランが響いていたのではなかろうか。が、マーク・ボランが響いていてもまんまマーク・ボランにはならないところがこの先生のセンス。『オブラディ・オブラダ』がまんま『昨日・今日・明日』(井上順之)にはならなかったように、『きりきり舞い』もきちんと日本の歌謡曲に姿を変えている。
 それはストリングスのアレンジが歌謡曲っぽいってことだけじゃなく、主軸になる旋律がきちんと歌謡曲の体裁を見せているからだ。
 近田春夫が後にこの曲をカバーしているが、パンク・アレンジになったそれは、それでもやはりちゃんと歌謡曲に聞こえる。これは都倉俊一のメロディの頑固さによるものだ。

ハルヲフォン 話ははずれるが、その近田春夫のカバー。近田春夫&ハルヲフォンの『電撃的東京』というGSや歌謡曲のカバーばかり(『恋の弱味』『東京物語』『真夜中のエンジェル・ベイビー』『ブルドッグ』等)を収めたアルバムに入っていたのだが、このアルバムがまた素っっ晴らしい。
 発売された当時高校生だった僕は、『電撃的東京』をかなり聴き込んだ。一時期どうしようもなく退屈にもなってしまったが、最近聴くとこれがまたいい。

 閑話休題。

 で、『きりきり舞い』の詞。この曲がヒットしていた小学生の頃は取り立てて何とも思っていなかった。
はらはらさせてごめんね
いいこでなくてごめんね
浮気ぐせはなおらないのよ
 山本リンダの歌の歌詞は、全部が女性優位の立場をとっている。「あなた好みの女になりたい♪」とは決して歌わない。これが女性にも受け入れられる要因なんだろうけど(この要因についてはそのうち、松田聖子をピックアップして語ってみたい)、『きりきり舞い』でもそれは貫かれている。
夜風が甘いだけでも
祭が近いだけでも
からだ中が燃えてしまうの
 この「祭が近いだけでもからだが燃えちゃう」っていうのは、いま聴くと燃えちゃうね(爆)。
 だけど僕は個人的に、勝手奔放な女性は好みではない。だから
たいくつな時は死にそうになるのよ
突然悪いささやききこえ
私はあなたを
捨てて 捨ててしまう
 な〜んてことを云われたとしても、「はい、そーですか」と、決して女の後を追ったりはしないだろう。
 だから「この歌みたく女性にきりきり舞いで人生を狂わされるようなことはない」 …などと締めくくってしまうとミもフタもないのだが、これは性格なので仕方ない(笑)。
 だもんでいまだにこの歌の詞に何かを感ずることはないのだけれど(すいません)、このメロディにこの詞がぴったりはまっていることは紛れもない事実で、この歌にはこの詞しかあり得ない。

 しかし改めてこの歌を聴いてみると、シンプルこの上ない歌だったんだね〜。
 イントロと間奏とエンディングは全部「チュ〜チュ チュルチュ♪」だけという呆気なさ。歌の構成もA-A'-B-A'' という簡素さ。
 それでもメロディに魅力があれば、こうして名曲として成立してしまう良いお手本。
 ただ派手さに欠けて、セールス的にはイマイチだったのかな?

 近田春夫版が出た時は、その音が潔くて好きだったけど、いまは緩いリンダ版の方がいいな。やっぱり。

 


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