あなただけを あなただけを
作詞:大野真澄 作曲:常富喜雄

あおい輝彦

 

 ああ今年も〜、この歌をつい口ずさんじゃう季節がきました(笑)。あおい輝彦の『あなただけを』('76)。
 流行ったね〜、この歌は。僕は中学生だった。レコード店でしょっちゅう流れてたし、喫茶店でも海水浴場のスピーカーからもこの歌が聴こえてきた。一説によると、当時のディスコでも掛かっていたらしい。
今より素晴しい人生
愛するあなたとならば
かなわぬ夢もありはしない
受けとめて欲しい
 う〜ん、こういう恥ずかしい詞は、なかなか書けるもンじゃないぞ(爆)。
 歌を作り始めたきっかけっていうのは誰でも、好きな人を想ってとか、好きな人に捧げるため… ってパターン。のっけからプロテスト・ソングを作るようなことはない。そしてその初めて作った歌の歌詞というのはそーとーに恥ずかしい。その時は自分じゃ気付かないんだけど。
 そういう詞だよね、これは(笑)。

 作詞をしたのは大野真澄。聞き慣れない名前かもしれないけど、『学生街の喫茶店』のガロでボーカルをとっていた男。ボーカルをとっていたから「ボーカル」と呼ばれていた。ガロの前には、東京キッドブラザースに。
 作曲は常富喜雄。この人は『地下鉄にのって』の猫にいた。猫を結成する前には、「海も失恋するのかなぁ〜」のザ・リガニーズ。つまり、早稲田大学の出身。

 確かこの頃大野真澄はガロを解散、ソロ・シンガーとしてフォーライフレコードに所属していた。常富喜雄は猫解散後フォーライフレコードのディレクターをしていて、後に杏里の『オリビアを聴きながら』をヒットさせている。
 そんな接点から二人で歌を作ったのだろうが、それをレコード会社の違うあおい輝彦が何故歌うことになったのかは知らない。
 知らないがとにかく大ヒットした。

 大ヒットもし、軽快なメロディに騙されてつい口ずさんでしまうこの歌、歌詞をよ〜く読んでみると、こっ恥ずかしいだけじゃなく、結構何だかよく判らない。
ああ 今年も南の風に
誘われてきたよ
 云っちゃ悪いケド、出だしがクサイでしょ?(爆)
 上手いこと書こう書こうとしている少女詩人風。
静かな夏の 雨に濡れた浜辺に
今もあなたを想いつつ
 ということは、“あなた”と“僕”は、現在は恋人関係ではないわけだ。別れた恋人だろうか…?
 それに「今年も」って云ってるくらいだから、去年も来てたんだろう。もしかしたら、毎年来てるのかもしれない。「また来てるよ…」とか云われながら(笑)。
ああ いつでもあなたの側に
いられるようになりたい
あなたのなにげない
ちょっとした仕草さえ
見ているだけの僕だけど
 そして“僕”はいつでも“あなた”の側にいるわけじゃない。それは事情があっていられないんじゃなくて、まだ親密なカンケイになれてないいられないだね。な〜んだ、片想いなんじゃん。。。
 だけど、“あなた”の何気ないちょっとした仕草を見られる距離にはいるわけだ。なんかコワイぞ。

 そして歌は、冒頭の詞へ続き、「この想いを受けとめて欲しい」と願いながらも、“見ているだけの僕”が去年も今年もいるわけだ。もしかしたら一昨年も。おそらくは来年も。ますますコワイ。
ああ あなたを愛し続けたい
僕のすべて賭けても
一緒にいる時も
離れている時にも
愛し続けたい いつまでも
 って、彼女にその想いをきちんと伝えているのだろうか? この“僕”は。
 それともちゃんと伝えてあって、毎年ひと夏だけを愉しむ間柄なのか? <渡り鳥か?

 う〜〜〜〜、、、わからん。
 片想いのシチュエーションらしいのに、片想いらしからぬ表現が、この歌をわかりにくくしてるんだね。
ああ あなたが歌を口ずさみ
僕の心を揺さぶる
ほかの誰にも 聞かせたくないんだ
あなたの声は僕だけに

波打つ髪が風に吹かれ
白いうなじにからんで
愛は永遠にと囁やいている
海より深く
 とにかく、これでもかというばかりに想いの丈の言葉の連続。
 確かに女は“言葉”に弱い。信じられないような歯の浮くセリフも、他人が云われてると興醒めな顔でくさすくせに、自分が云われると木に登る。
 それを知ってて「愛の言葉」を送り続け、女をモノにしようというヤらしい魂胆のオトコもいる。
 だが大抵の男は、「男がそんなこと云えるか!」と、心とは裏腹な悪態をついてみたり、モテないのを口下手のせいにしたりする(泣)。しかし男の立場から云わせて貰えば、女性がうっとりするような美辞麗句を平気で並べられるオトコは信用ならん!(爆)
 それでも女は“言葉”に騙される。

 まあ、これは歌だからよしとしよう。
 だけどそれにしても最初から最後まで、何のてらいもなくこれだけの愛の言葉を羅列する勢いはすごい。おまけにタイトルは『あなただけを』。ここまでくれば、天晴れと云うしかない(爆)

 そして、メロディが断然いい。
 「誘われて〜きた〜よ〜♪」の部分、G - Em - Bm7 ときて、「静かな夏の〜♪」の C に入る前に、定石の G7 が入っている。定石すぎて誰も使いそうにないこのコードを入れることで、ぐっと『あなただけを』らしくなってる。この伴奏を弾きながらここで G7 をかませると、「あ〜、『あなただけを』だぁ〜」って気分になる(笑)。
 メロディの良さ(能天気さ)が、歌詞のいやらしさを消してくれている。そして歌がふと口をつく。いい歌だよなぁ。間寛平もカバーしていた。

 で、誰かに恋してたりすると、この歌詞を声に出して歌うことが快感だったりする。
 あおいさんのジャケ写もスゴイ。

 


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