E気持ち E気持ち
作詞:阿木曜子 作曲:筒美京平
沖田浩之

 

 『E気持ち』('81)。正直云って、私ゃこの歌が大好きでしたよ(笑)

 『金八先生』でニヒルな役どころだった沖田浩之が、ポンポンを持ったチア・ガールをバックに、「A・B・C、A・B・C、A・B・C、E〜気持ち♪」というこれまたキャピキャピの女の子のコーラスに合わせて、やけに明るい顔で踊っている…
 こ、これがあの松浦悟と同じ人物か…
急に綺麗になったあの娘に
キャンパスの噂広がる
Aまでいったと
アンアア、アアア〜ン
 鼻にかかった声がたまらない。まずはこれが沖田浩之の歌の魅力。
 筒美京平は、このテの声が好きなんだな、きっと。
 平山三紀、郷ひろみ、沖田浩之、松本伊代… 確かにポップな曲の書き甲斐のある声質だ。
 CCBからの売り込みに際して、「ドラムの笠くんが歌うなら曲を書く」と云ったというエピソードが伝えられているくらいだから、京平先生はボーカルの声質に関して、ある拘りを持っていたんだと推察できる。
そうさ噂は光の速さより速いよ
 こ、このギリギリのメロディー。これが京平先生の真骨頂だ。
 80年代に入って筒美京平の音楽は、サウンドや曲構成には凝りながら、メロディーは至ってシンプル。「光の速さより速いよ♪」の譜割りはシンプルを通り越して、危なさまで感じる。このギリギリ感が、職人技。
常識なんてぶっ飛ばせ
仲間同士さ手を貸すぜ
大人は昔の自分を
忘れてしまう生き物さ
 ショーン・キャシディの『キャロライナ・ガール』のようなポップな展開、TOTOのような風吹くアレンジ。
 イントロと同じピアノ・リフを弾いているのは、『渡る世間は鬼ばかり』の羽田健太郎。

 当時、僕がこの曲をどれくらい好きだったかと云うと、この曲をモチーフに(パクって?)自作曲をこしらえたくらい好きだった(爆)。
 その曲は僕の周りではえらく評判が良く、自主制作のレコードも飛ぶように…とまではいかずとも、ぼちぼち捌けたのだが、2年前、その僕の曲とそっくりな曲がヒットしてると、僕の周りのほんの一部でだけ騒然となったことがあった。
 その僕の曲とそっくりな歌とは、サザンオールスターズの『波乗りジョニー』。勿論単なる偶然で、桑田佳祐が僕の曲をパクったなんて云うつもりは毛頭ありません。
 そういう観点から聴いてみると、『E気持ち』と『波乗りジョニー』、似てるでショ(笑)。

 閑話休題。

 さてこの『E気持ち』。
 RCサクセションに『キモチE』というナンバーがあって、当時RCのファンの間からブーイングが出ていた。
 『E気持ち』の方は作詞が阿木曜子だが、プロデューサーが酒井政利であることから、恐らくは先にタイトルありきで、酒井氏が阿木氏に発注したと窺える。
 いまでは古臭く聞こえる“隠語”も、当時は溌剌としたヤらしさいっぱいで、デビュー曲としてはまずまずのヒット。
A・B・C A・B・C
あー E気持ち
 この「あー」の部分でポルタメントするヒロくんの声がたまらない。沖田浩之の歌は、決して下手ではない。
 云うまでもないことだが、この楽曲は筒美京平が沖田浩之の声に合わせて作ったものなのだ。かつて、平山三紀の声に合わせて『真夏の出来事』を作ったように。

 『E気持ち』がヒットしていた時、僕は大学に入学したて。浪人明けの僕に、春の大学キャンパスは明るくまぶしく、この曲の軽快さがやけに心地よかった。いまでもこの歌を聴くと、新歓ムードいっぱいのキャンパスを思い出す。
 沖田浩之もこの時、現役で大学(青山学院)に入っていた。

 ただこの歌。僕の場合、楽曲の素晴らしさと、歌い手の声ばかりに目がいって、詞を吟味することがなかったが、よく読んでみるとまったくの“企画モノ”(笑)。
 で、その後のリリース曲を見ると、「ア・バ・バ・ババ!」と意味不明の言葉で始まる『熱風王子』(タイトルもスゴイ)や、「アアアん、ソコさ!アアアん、そいつ!アアアん、ソレさ!アアアんイクぜ!」と、ひっくり返りそうになる歌詞の『半熟期』、サビに「困ルンバ!困ルンバ!困ルンバ!!」をリフレインする『困ったラヴソング』と、二のセンだと思っていた沖田浩之、、、実は、“企画モノ”歌手だったのか… といまさらながらに吃驚。

お前にマラリア とどめはこれ。『お前にマラリア』。
 う〜む。。。

 とにもかくにも、郷ひろみが抜けて低迷していたジャニーズ事務所が、たのきんブームで再興する前(もう兆しは見えていたが)の隙間に躍り出た沖田浩之。
 竹の子族でスカウトされた彼も、あと1年遅かったらジャニーズ事務所の力に押されて、『金八先生』のあの役も無かったに違いない。
 もうひとつ違う空想をすれば、もし彼がジャニーズ事務所からデビューしていたなら、もう少しアイドルとしての息も長かったのではなかろうか。
 どっちが幸か不幸かわからないが、彼の歌はもう聴けない。

 


+--prev---index---next--+

 

Copyright2002 Nyanchoo

DO,DE,DA