Red Cab Red Cab to Manhattan

Stephen Bishop

 

 こんな云い方をしちゃうとミもフタもないが、絶対に成功するBGMというものが存在する(爆)。
 スティーヴン・ビショップのアルバム、『哀愁のマンハッタン(Red Cab to Manhattan)』。僕はこのカセットをクルマに常備し、デートに臨んでいた時期があった(笑)。

 海を眺めながら一日遊んだ黄昏時、「そろそろ帰ろうか」とクルマに乗り込む。
 エンジンをかけ、カセットを入れ替える。アクセルを踏み、ゆっくりクルマが動き始めるのに併せるように、1曲目の『Red Cab to Manhattan』が始まる。。。
 これで全てがキマるが、この時間は夜よりも視界が悪いので、運転に注意。

 “ミスター・ロマンティック”ことスティーヴン・ビショップは、サンディエゴ生まれのシンガーソングライター。アート・ガーファンクル、ニック・デカロ、バーバラ・ストライザンド、チャカ・カーン、ベッド・ミドラー等に曲を提供していた。

 '76年に自身で発表したデビュー・アルバム『Careless』にはそのアート・ガーファンクルを始め、ラリー・カールトン、エリック・クラプトン、チャカ・カーンらの名前もクレジットされている。
 このアルバムからシングル・カットされた『On and On』がヒット。情感あふれる優しいメロディーが胸に浸み込む。2曲目の『Never Letting Go』もかなりイイ。
 アルバム全体も練られた出来で、メロウな歌声と、口まねで吹いているとも云われるトロンボーンのソロが、なんとも云えないムーディーな味わいを見せている。

 2枚目のアルバム『Bish』も、彼自身のギターとストリングス(マーティ・ペイチのアレンジ)の醸し出す雰囲気が、これまた切ない名盤。
 普遍的なポップスを聴かせながら、どこか古き良き時代の匂いを漂わせるモダンな仕上がり(ハリウッドに対する想いが込められているらしい)で、その余韻が何ともいえない。

 そもそも、僕はAORとかソフトな手触りの曲っていうものを、敵対視するくらいに嫌っていた。特に10代、20代の頃は。
 んな中で、どうしてスティーヴン・ビショップだけはアルバムまで買っていたのか?

 ひとつは、当時何故か輸入盤屋でスティーヴン・ビショップのアルバムがとても安く売られていたから(爆)。
 そしてやはり、デートに備えて(笑)。
 いくら僕がバッキンバッキンのロック好きだったからと云って、デートのクルマの中でデイビッド・リー・ロスのソロ・アルバムを掛けるほど野暮じゃない。だからと云って松岡直也やクリストファー・クロスを流すのは耐えられないし、ロキシー・ミュージックは好きだけど(好きなだけに)ちょっとジャマ。
 ドライブに合う音楽を物色する中、スティーヴン・ビショップは抜群の選択だった。まさにカー・ステレオの帝王!(爆)

 って、バカにしているわけじゃないんだよ。ホントいいんだって、スティーヴン・ビショップ。
 ライナーを見ると、ビートルズに多大な影響を受けているみたいなんだけど、そんな印象はない。そんな印象はないんだけど、ビートルズに影響されていることはよくわかる、そんな品のある隠し味の使い方の妙がいい。

 そして『哀愁のマンハッタン』。
 レコード会社とのゴタゴタがあったとも聞くが、この名盤がCDで入手できないのは何と云っても残念至極。そんな理由もあってか、音楽ファンの間でもあまり語られることの少ないスティーヴン・ビショップの中でも、全く語られることのない(爆)このアルバム、トータル・アルバムとしても綿密な組まれ方がしていて、秀逸。

 「映画のサウンド・トラックの人」という印象が強いのも、スティーヴン・ビショップをBG向きと捉えてしまう要因だが、そうした映画音楽を経て作られた『哀愁のマンハッタン』には、単なるBGにとどまらせない魔法のような心地よさがある。
 こんな言いぐさは策士のようで嫌なのだが、この心地よさがデートを成功に導く(カノジョをその気にさせる?)魔法なのだ。

 それ以前に、誘う相手がいない現在は、まったくの宝の持ち腐れ(泣)。

 


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