HIGHSTREET STYLE NHK-BS スタジオライブ

吉田拓郎

 

 わけもなく目頭が熱くなる歌がある。SMAPの言葉を借りれば「ぼくの心のやわらかい場所を、今でもまだしめつける」という感じか。
 僕にとってのそれは、拓郎の『』だ。この歌を聴けただけでも、ゆうべのライブの収穫は大きかった。

 12月に放映予定の《吉田拓郎・NHK-BS スタジオライブ》の観覧抽選に当たり、2000年夏のツアー以来になる拓郎を観てきた('02.10.30)。
何てことの無い出逢いって言うんだろう
ただ笑ってる君が居て
いつものように僕は酔っていて
 この歌詞の中には「タクロー」という実名が出てきて、まごうことなき拓郎のある恋愛を歌った歌なのだが、誰にでも覚えのあるようなシチュエーションが、自分の恋の話を思い起こさせる。
 酔って女のコを口説いた… というちょっと軽めの行動だが、そんな中にも真剣な恋は生まれたりする。相手がそれだけ素敵な女のコだったのだろう。
知ってるよ本当の君の淋しさを
やさしい心の奥を
だからいつも言葉も少ないんだね

なぐさめたりなぐさめあったり
つまんないことだよね
このままが一番に思えるものね
 この部分に、僕はとてつもなく弱い(笑)

 テレビ・スタジオでのライブ… 会場の狭さもあってか、演奏の音が素晴らしく粒立っていた。ドラムやホーンは、生音が耳に届いている程。
 そして、歌詞がはっきり聞き取れる。これは良かった。
 以前、この『Y』と歌詞違いの『S』という歌をコンサートで聴いたことがあるが、ホールだった為、せっかくの歌詞が響いて聞き取り難く、レコードになって初めて「こんなことを歌っていたのか」と知る始末。

 そしてゆうべの拓郎は、異様なくらい声が若かった。
 一時期、昔のキーが出ないと下げて歌っていたが、「キーが戻って、前よりも高くなった」なんてMCがある程。
 『春だったね』『君が好き』『君去りし後』『落陽』等、(弦とブラスが入っていることもあり)『ライヴ'73』と同じアレンジで聴かせてくれたものは、本コラムで以前僕が書いた“『ライヴ'73』の声”を彷彿としていて、鳥肌が立った。
 「いい声だなぁ〜」との自画自賛もアリ(爆)。

 拓郎は、トニー・ビスコンティや筒美京平と並ぶくらい弦の使い方が上手い。そうした生弦や生ブラスを配した編成を、目の当たりにできたというのも、もうひとつの収穫。
 何せ、オーディエンスの配置が変わっているのだ(笑)
 ボーカルの拓郎を先頭に、ギター(2)、コーラス(4)、ベース、ピアノ、キーボード、ドラムを従え、指揮の瀬尾一三氏の配下にストリングスとホーンセクションが… という配置を、ぴったり囲うように客が座る。
 僕はちょうどホーンセクションの横で、拓郎の斜め後ろ姿しか見えないけれど(泣)、トランペットのアヤシゲなおじさんには手も届きそうな距離。
 足元にある「セットアップ・リスト」は字こそ読めなかったが、譜面台にある楽譜は丸見えなので、次に何が演奏されるかは、イントロが始まる前に察知できる(笑)。拓郎の歌詞カード替わりのモニタも、はっきりと歌詞が読み取れる。まるで自分がバンドの一員になっているような座り位 置。

 「僕の青春は恋と歌の旅、果てることなく」を地で生きてきた拓郎を振り返るような選曲で、僕の好きな歌ばかりが聴けた… というのも良かった。
愛する女がいるじゃないか
そんなに荒くれる事はない
 大好きな『ロンサム・トラベリン・マン』は、このトシになると本当にしみる(この歌って人気ないの?)。私ゃ、希望の明日を信じてるよ(笑)。

 『ロンリー・ストリート・キャフェ』の弾き語りも感動的だった(ちょっとギターが心配だったが、OK!OK!(爆))。『パラレル』も、厚みのある弦に押されて、涙ちょちょ切れ。

 オープニングの『とんとご無沙汰』、それから『いつでも』『淋しき街』『いくつになっても happy birthday』『朝陽がSUN』といった、往年のファンにとっては“新しめ”の曲も、声が若返った分、また違った魅力で届いた。

 『外は白い雪の夜』の歌詞間違えは痛恨だったが、それを補って余りある『どうしてこんなに悲しいんだろう』、そしてやはり『流星』はいつまでも色褪せない名曲だ。

 そして自分の青春を懐かしむかのように歌う『サマータイムブルースが聴こえる』が、とても印象的だった。

 他、『今日までそして明日から』『諸人こぞりて』、ラストの『人生を語らず』まで、とにかく満腹感いっぱいの2時間半だった。当たって、本当に良かった(笑)

 現在は岡本おさみ氏とアルバムを制作中、来年はツアーをという嬉しいニュースもありで、やはり拓郎始動は、心躍らせる。

 


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