夕日は昇る 夕日は昇る
友部正人:作詞・作曲

友部正人

 

 もうすっかり忘れていたけど(ホントに(笑))、カミさんと恋愛をしていた時期もあって(爆)。

 時はバブル真っただ中、僕は会社勤めでやたら忙しく、デートの時間に30分1時間遅れる… なんてことはしょっちゅうで、それでも彼女は駅の改札口で、小洒落た喫茶店で、楽器店の楽譜売り場で、駅ビルの本屋で、辛抱強く待っていてくれた。クリスマス・イブに4時間遅刻した時には、さすがにキレてたけど。

 ほとんど毎晩会っていたような覚えがある(カミさんに訊くと、週に2〜3回だったようだが)。呑み助の僕の行き先は、お酒の飲める処。居酒屋だったり、焼鳥屋だったり、バーだったり、パブだったり、勿論たまには気の利いたレストランでワインを開けたりもした。
 仕事が終わってからのデートだから、いい気持ちで飲んで彼女を送ると、早くて深夜12時、、、午前2時を回ることもしばしだった。結婚してから打ち明けられた話では、「帰りが遅い!」と随分と両親から叱られていたそうだ。
 日曜日は日曜日で、クルマを伊豆や富士五湖の方へ走らせたり、近場で映画を観たり、ショッピングをしたり。毎日会っていたような覚えも、あながち大袈裟な錯覚でもない(笑)。

 連休や、夏・冬のまとまった休みには、温泉旅行に出掛けた。彼女の趣味のバード・ウォッチングにつき合い、厳冬の東北で凍えそうな思いをしたこともある。
 結婚後、カミさんの実家で会食中つい、婚前に訪れた土地の話をしてしまったことがある。結婚前とあって、親の前では仲のいい女友達と出掛けたことにしていたらしい。まあバレたところで、もう時効だ(笑)。

 カミさんは僕と同じ横浜の育ちだが、義父の実家は静岡にあった。義父の勤めが東京だった為、4年前に隠居するまでは、横浜に住まいを構えながら、静岡の家の諸々もこなしていた。それで正月や盆の時期は、彼女は家族で静岡に行っていて、長く会えなかった。

 彼女に会えない時の僕は、まったくの手持ち無沙汰だった。
 本を読んでも、ギターを弾いても、映画のビデオを借りて来ても、いまひとつ面白くない。仲のいい男友達も、せっかくの休みにカノジョとデートでヒマなヤツはいないし、カノジョもなくヒマな男は遊んでも面 白くないヤツばかり(爆)。

 うだるような暑さの夏、部屋でゴロゴロしているのも勿体ないので、近所の区営プールに文庫本を持ってひとり出掛けた。
 2時間泳いでビールが飲みたくなり、夕食も済まそうと、ビーチサンダルのまま行きつけのレストラン・パブへ。
 するとそこにも「お盆で休業」の貼り紙が。

 仕方なくスーパーで枝豆とビールを買い、家に帰る。

 ビール・ジョッキを冷蔵庫のフリーザーに入れ、枝豆を茹で、塩をたっぷり振って、テーブルへ。いましがた凍らせたジョッキにビールを注ぎ、まだ温かい枝豆をつまみながら飲み干す。ベランダに目をやると、取り込み忘れた洗濯物が、夕日にまっ赤に染まっている。
ねぇ、知ってるかい
日暮れにおりて来た太陽が
また昇りはじめて
雲の中にかくれて夜がきた
こんど君にいつ会える

今まで沈むとばかり思っていた太陽が
どんどん昇って消えちゃったんだ
日暮れは一日の波打際で
海岸にいるように騒がしい
こんど君にいつ会える

ぼくは君のこと思いながら
コップにビールを注ぐ
するとあたりがまっかになって
地平線が白く泡立ったんだ
こんど君にいつ会える

こんど君にいつ会える
こんど君にいつ会える
こんど君にいつ会える
 その頃、この歌が好きで繰り返し聴いていたせいか、いまこの歌を聴くとあの日のビールと枝豆を想い出す。
 カミさんに会いたい… と思っていた気持ちは、忘れてしまったけど(笑)。

 


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