THEREMIN The Art of the THEREMIN

Clara Rockmore

 

 ビリー・ワイルダーの『失われた週末』は、破滅に向かう作家のアルコール中毒との闘いを描いた映画で、冒頭から「ひゅるるん、ひゅるるん…」という音が聞こえ、その後の怖ろしい展開を予測させる。。。
 物語中も、破滅を暗示させるようなシーンや、よくないことが起きそうな場面でこの音が響いてくる。
 この「ひゅるるん…」の音の正体は、“テルミン(THEREMIN)”という楽器である。

 他にもヒチコックの『白い恐怖』や、ロバート・ワイズの『地球が制止する日』でも、テルミンの音が恐怖を盛り上げるのに、一役買っている。

 このテルミン、20世紀初頭のロシアの発明家で、チェロの名手レフ・テルミンによって誕生した最古の電子楽器で、シンセサイザーの祖とも云われている。
 鍵盤も弦もないこの楽器には、2本のアンテナが垂直に立てられていて、演奏者はそのアンテナに手を近づけたり遠ざけたりすることで、ある時はバイオリンやチェロのように、またある時は、女性の声、またある時はSF映画の効果 音を出すことができる。その演奏する様、魔術師か魔法使いの如し。

 テルミンに魅せられたアーティストも多い。
 クラシックの分野はもとより、ブライアン・ウィルソンは『グッド・バイブレーション』の中で使っているし、モンキーズやレッド・ツェッペリンも、そのサウンドを取り入れている。
 日本でもゴン・チチや中村一義、高野寛、コーネリアスがうまく使っていた。

 昨年、老いたテルミン博士へのインタビューを織り込んだ映画『テルミン』が公開され、サンダス映画祭で「ベスト・ドキュメンタリー」賞を獲得している。
 このドキュメンタリー、テルミン博士の生涯にも引き込まれたが、劇中演奏されるテルミンの不思議な音に、それこそ魔法にかかったように惹き付けられた。
 不安定で、微妙で、多くの映画では恐怖感を煽るために使われていた「ひゅるるん…」が、懐かしさを含んだ何とも癒される音を放っていた。

 劇中演奏は、テルミン博士の弟子で、ニューヨーク時代の恋人でもあったクララ・ロックモア
 ラフマニノフの『ヴォカリーズ』、サン・サーンスの『白鳥』、ストラヴィンスキーの『火の鳥の子守歌』、チャイコフスキーの『憂鬱なセレナーデ』等、この憂いを持った色を何と表現すればいいのだろう。
 映画では二人は東西の冷戦で引き裂かれ、何十年ぶりに再会するという姿を追った感動ドキュメントになっている。

 ということで、CDが出ていました。『アート・オブ・テルミン(The Art of the THEREMIN)』。こればかりは聴いた人でないとわからない(笑)。<結構、傑作
 映画はビデオとDVDが出ているようです。

 


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