ROCK'N'ROLL ROCK'N'ROLL

John Lennon

 

 僕はマニアでもコレクターでもないので、聴きたい時に聴きたいレコードやCDを買い、結果 、気付いたらレコードやCDが溢れるほど増えてしまった… ってだけのことなんだけど、中には追求を惜しまず、まさにコレクターの如く血眼になって蒐集めているセッションもいくつかある。

 '73〜'74年にかけてのジョン・レノンの『ロックンロール(ROCK'N'ROLL)』セッションもそのひとつ。

 '73年はジョン・レノンにとって、荒れに荒れている時期だった。
 ヨーコとの関係は悪化し別居、また数々の裁判沙汰に巻き込まれ、ジョンは連日飲んだくれ、精神的にも不安定、自ら「僕の中のフェミニズムが少し死んでしまった」とこぼす程。
 そこにやはり精神不安定の大家であるところの(笑)フィル・スペクターが新しいアルバムの制作を提案してこの『ロックンロール』は作られた… ということになっているが、真実の事情はちょっと違うところにあったようで、ビートルズの『Come Together』がチャック・ベリーの『You Can't Catch Me』の盗作だと訴えられた際、チャック・ベリーの楽曲の版権を所有する出版社の社長から「裁判で争いたくなかったら、ウチが所有する曲のカバー・アルバムを制作するように」と迫られたからとか。

 何はともあれ、自滅していたレノンが再び音楽活動を始めたことはとっても喜ばしいことだったのに、そこでまたひと悶着。プロデューサーのフィル・スペクターがスタジオで数々の奇行を繰り広げ、しまいにはピストルまでぶっ放す始末。
 あまりのひどさにスタジオから退去を求められたフィルは、レコーディングされたマスター・テープを全て持って逃走。

 『ロックンロール』アルバム制作が頓挫してしまったジョン・レノンは'74年、違うアルバム『心の壁、愛の橋(WALLS AND BRIDGES)』の制作に掛かる。
 同時期、エルトン・ジョンとデュエットした『真夜中を突っ走れ(WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT)』がチャートの1位を記録。エルトン・ジョンのコンサートにも飛び入りし、ジョン・レノンは復活を果 たす。その打ち上げでレノンはヨーコと再会し、二人はまたもとの鞘に。

 その話と前後し、『ロックンロール』のテープは戻って来る。ジョンは『心の壁、愛の橋』を完成させた後、自分自身のプロデュースで『ロックンロール』を完成させる。
 が、完成したテープを、発表前にチャック・ベリーの版権出版社に聴かせようと送ったところ、今度はそのテープを元にした『ROOTS』という海賊盤が出回り、正式リリースが早められるという事態まで引き起こり、何かとトラブルの尽きないアルバム。

 そんな経緯もあってか、あまり「このアルバムが好きだ」という声を聞かないが、僕はこのアルバムが大好きで、ことそのレコーディング・セッションには興味が尽きない。
 それは「ロックンロールが好き」で「バンドのセッションが好き」という、僕がロックを好きな根源がそこにあるからにほかならない。

 曲によってデキのばらつきがあるのは否めないが、それ以上にセッションとしての勢い、そしてジョンの“ロックンロール”に対する思いが演奏のそれぞれに浮き上がっていて、極上の気持ち良さがそこにはある。
 当初、フィル・スペクターが携わったこともあり、ブラスやストリングスの分厚いバッキングも、他のジョンのアルバムと一線を画している。

 ジーン・ビンセントの『Be-Bop-A-Lula』は、本家を超える出来ばえ。
 ベン・E・キングの『Stand By Me』は、実は僕は本家より先にジョンのバージョンで知ったのだが、そのシンプルで力強い味わいに、中学生だった僕はそーとー参った。コピーもした。
 リトル・リチャードの『Rip It Up/ Ready Teady』『Slippin' And Slidin'』、バディ・ホリーのものまねをしている『Peggy Sue』、サム・クック・メドレーの『Bring It On Home To Me / Send Me Some Lovin'』、わざと『Come Together』を意識したアレンジで挑んだ『You Can't Catch Me』、ラリー・ウィリアムズの『Bony Moronie』、ロイド・プライスの『Just Because』と、どれをとっても聴き処満載、ロックンロールにのめり込んでいた少年ジョンの姿が垣間見れるよう。

 そしてこのアルバムは、どれだけターン・テーブルに乗せても聴き飽きることなく、何時如何なるときにでも楽しませてくれる。
 それはこのアルバムが唯一、ヨーコから離れて作られたアルバムだからじゃないだろうか?

 ジョン・レノンは決して“愛と平和”の人なんかじゃない。
 ジョン・レノンは、ただのロックンローラー。それはエルビス・プレスリーやロニー・ドネガンに憧れた少年時代から、キャバーン・クラブで歌っていたビートルズの前身時代、マッカートニーと曲を作っていたビートルズ黄金期、そしてソロ… と、どこも変わるところはない。

 そんなジョンの本質が、この『ロックンロール』にはある。

 セッションについてはまだ全貌が明らかにはなっておらず、参加メンバーすら正式には「レオン・ラッセル他豪華メンバー」とジョンがコメントしただけで、全ては想像の範囲の中。
 セッションの時期にもよるが、ドクター・ジョン、チャーリー・ワッツ、ハル・ブレイン、バリー・マン、ホセ・フェリシアーノ、ジョニ・ミッチェルらが参加していると云われている。
 『Bring It On Home To Me』ではエルトン・ジョンの声が聴きとれるし、『Stand By Me』のギターがジェシ・エド・デイヴィスなのも明解。
 一説によると、ポール・マッカートニーやリンゴ・スターも参加していて、ポールがセッションした為にメンバー・クレジットをはずしたという話も。

 このジョンのルーツを追体験できるセッションは、『メンローヴ・アヴェニュー(MENLOVE AVE.)』やボックス・セットの正規リリース以外にも、アウト・テイクを集めたブートレッグで聴くことができる。
 先に挙げた『ROOTS』や、リハーサル・セッションを収めた『Jesse Edwin Davis Tape』、『Ultimate Rock 'N' Roll Collection』等、ブートを見つける度に僕は手を出してしまう。

 ジョンはこのアルバムで「そろそろお別れの時間になってしまいました…」とDJしているが、その後『ダブル・ファンタジー(DOUBLE FANTASY)』まで実際に5年間お別れしてしまって、そして『ダブル・ファンタジー』リリースの直後、本当のお別 れをしてしまった。

 


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