oldies oldies

吉田拓郎

 

 ニュー・アルバムはセルフ・カバー集と聞いて、あんまり期待してなかった。
 そしたら、すごくイイんだわ。

 期待してなかった… ってのは、前の『みんな大好き』のことがあったから。あれもベスト盤的なセルフ・カバー集で、フジテレビの《LOVE LOVE あいしてる》の人気に後押しされるような恰好で出たんだけど、どうも好きになれなかった。
 名立たるプレイヤーを集めたLOVE2 ALL STARS も、名立たるプレイヤーの頭数の多さからか、引き締まりに欠けた印象で、まさに“船頭多くして船山に上る”な仕上がりだった。
 おまけに拓郎も寄る年波には勝てなかったかキイがオリジナルより下がっていて、パワーが半減した感が拭えなかった。

 そんなわけで今回の『oldies』も、初公式化のレアな名曲『僕らの旅』と『バイタリス・フォークビレッジのテーマ』の目玉 以外、さほど楽しみにしていなかった…。が、

 まず『リンゴ』がね、チョー恰好イイ。
 この淡々としたギター・フレーズに、あらためてこれは上質のブルースなんだなって気付かされた。中学時代に戻って、思わずギターをコピー(笑)。
 そしてやはり何と云っても詞がいい。70年代の若い男女の脆弱な幸福がそこにある。

 このアルバムの特筆すべきところは、第一に拓郎のボーカル。歌がね、立ってるんだよ。
 これまでのアルバムの中では『ひまわり』を聴いた時に、「あれっ? 拓郎ってこんな歌上手かったっけ?」って思うくらいボーカルが良かったけれど、今回もそれに匹敵、いや上回るくらいボーカルが魅力的。

 それからアルバム全体の手触りが、名盤『元気です』を想わせる。そこが今回「すごくイイんだわ」と感じさせる点。

 『元気です』とニュー・アルバム『oldies』の共通点。
 まず、岡本おさみの詞が並んでいる(笑)。70年代から90年代までの歌の中から40曲を拓郎は候補に挙げたらしいんだけど、絞られた10曲中6曲が岡本おさみ作詞。
 それから、音の作り方が『元気です』と似ている。手作りっぽいっていうか、アイデアを出しながら試行錯誤して固めていった… そんな過程が見えてくるような、人間くさい音。
 ここが重要で、70年代の石川鷹彦とのコラボレーションを、今度は鳥山雄司と実現している。船頭が少ない分アイデアもよく練られ、拓郎の本来のプロデュース能力が如何なく発揮されている。
 鳥山雄司も素晴らしいプレイヤーだと、ギターの音ひとつひとつに、フレーズひとつひとつに表れている。
 そしてもうひとつ、見逃しそうな共通点。
 写真をTAMUJINが撮っている(笑)。

 『Voice』。この歌はシングル『もうすぐ帰るよ』のB面にしか収められておらず、あまり知名度のない曲なんだけど、僕はとっても好きな歌だった。92年の弾き語りツアーでも演ったかな。エッセンスはオリジナルのままに、スパニッシュ・ギターをフューチャーしたフラメンコ風な仕上がり。

 『こうき心』は個人的には3拍子の弾き語りのテイクが好きだけど、ここではスリリングなアレンジの8ビート。『今日までそして明日から』同様、他愛ない言葉の連呼なのに、マイナーなメロディに乗るだけで、字面 に無いやるせなさが出てくるから不思議だ。

 拓郎の歌の中で、いちばん多くレコーディングされているんじゃないかと思える『祭りのあと』。90年の『まにあうかもしれない』をインサートしたテイクをチラっと彷佛とさせるが、聴こえてくるアコースティック・ギターが、まさに拓郎の弾き語りの時のハンマリング・オンにプリング・オフ(恐らく拓郎自身が弾いているのでしょう)。この拓郎の手クセとも云える刻み方が、往年の拓郎ファンにはたまらないのでは?(笑)

 『かくれましょう』。イントロを聴いて、ちょっと違うんじゃ… と思ったけど、歌が出てきて「あ、こうなるのか…」と、妙に納得。エレクトーンやポータ・サウンドの自動伴奏のようなオカズが耳障り。

 問題は『高円寺』と『蒼い夏』(笑)。これは拓郎ファンの間では賛否両論呼ぶだろうね〜。
 確かに果敢なチャレンジをして、音楽的には成功していると思う。成功しているとは思うけど、取り敢えず現段階、僕は抵抗ある。何度も聴いていくうちに、たとえば1週間後、或いは1カ月後、1年後、10年後、違和感がなくなるのかもしれないけど、先行シングルにもなった『襟裳岬』の「え〜〜りもの〜♪
」の歌い回しも含め、どうかな… と。

僕らの旅 で、『oldies(『僕らの旅』〜『バイタリス・フォークビレッジのテーマ』)』がイイ。
ふりかえってみるのもいいさ
道草くうのもいいさ
僕らの旅は 果てしなくつづく

人が恋しい時がある
ここに一人でいる僕を
夜空のどこかに しるしておきたい
愛する人に届けと
 もう涙ちょちょ切れ。
 拓郎自身、ノリにノッってる頃の作品でもあるわけだけど、自然体でこんな詞とメロディがふっと湧いてきてしまう、ホント才能ある人だな〜。

 そして唯一の新曲『家へ帰ろう』が、このラインナップの中に違和感なく溶け込んでいるところが、吉田拓郎と鳥山雄司のプロデュース手腕だね。

 


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