東京タムレ 東京タムレ

原由子

 

 僕がまだ幼かった頃の海水浴場(古!(笑))じゃね、流行歌(古!2(笑))が流れてた。砂浜に立てられたポールに、メガホンみたいな恰好のスピーカーが括り付けられてて。
 場所はどこだろう…。ウチが行くあたりだから江の島とか三浦とか、所謂“湘南”だと思うんだけど。弘田三枝子の『砂に消えた涙』とかね。そんなのが掛かってた記憶がある。

 桑田佳祐の音楽って、な〜んかその海水浴場で流れていた歌の匂いがする… ってずっと思ってた。加山雄三が歌う“湘南”のイメージとはまた違う。

 原坊が今回『東京タムレ』で60年代の歌謡曲をカバーしたことに何の違和感も感じないのは、その前哨があったからだと思う。
 前作『MOTHER』の中の『じんじん』や『東京ラブコール』、それからハマクラのカバーの『愛して愛して愛しちゃったのよ』、『鎌倉物語』はイントロがモロに『砂に消えた涙』だったし(笑)、それからサザンの雰囲気がね、どこか冒頭に書いた60年代の海水浴場のテイストがあった。『チャコの海岸物語』や『そんなヒロシに騙されて』、それに『六本木のベンちゃん』とかはその象徴。

 でまた、その60年代歌謡曲に原坊の声がとっても合う。
 それは原坊の声が古臭いって云ってるんじゃなくて、逆に原坊の声だから古い歌謡曲が少しも古びることなく、また懐古趣味にならずにこの昭和77年(笑)に楽しめるのであって、何て云うか、歌主導の歌に、原坊の声は向いているんだと思う。

 そしてここに並んだ60年代の歌たち。
 高度成長期の勢いに乗ってのことか、この時代の歌はどれもメロディアスでおセンチで、そしてどこか怪しくて(笑)、聴けばゾクゾク、歌えばワクワクの官能的なものばかり。
 そんな中からの選曲がほんとうに振るってる。

 京平先生の初々しい勢いがキュートないしだあゆみの『太陽は泣いている』。トップにこの曲ってのがイカしてるぅ〜(60年代風(笑))。

 15年位前のテレビ・プログラム《Merry Christmas Show》でもカバーしていた島倉千代子の『愛のさざなみ』。この歌はロックにしてもよし、ブルーズにしてもよしの、奇跡としか言い様のない日本歌謡の名曲。

 ザ・ピーナッツの『私と私』は、永六輔の詞が他愛ないのにどこかナーバスな佳曲(どうしてこれをチョイスしたかね〜)。

 タイトル・ナンバー『東京タムレ』。僕は知らない歌だったけど、一度聴いたら忘れられないキュートなノリの不思議なナンバー。それもその筈、作曲者の鈴木庸一氏は、『東京ドドンパ娘』や『伊勢佐木町ブルース』を作った方。

 日野てる子の『夏の日の想い出』は、60年代の匂いプンプンの名曲。

 『生きがい』は由紀さおりのイメージを払拭した仕上がり。

 『夜霧の別れ道』はGS色濃いノリノリのナンバー。『太陽は泣いている』等、原坊(サザン)はこのタイプの曲が好きだよね〜。まさにGS世代(笑)。

 原坊の母校、青山学院を歌ったぺギー葉山の『学生時代』。

 ベッツィ&クリスの『花のように』。加藤和彦はこの頃、このテのフォークの曲をいっぱい書いてた。

 キー的に桑田のボーカルがきびしい…かな?の『いつでも夢を』。これは僕も好きで、オリジナル(橋幸夫・吉永小百合)のシングルを持ってる(笑)。

 テルミンをフューチャーした仲宗根美樹の『川は流れる』。こうした選曲がほんとシブイ。

 やはりドーナツ盤を持ってる黛ジュンの『天使の誘惑』。当時の「歌謡ショー」を彷佛とさせるライブ仕立て。

 下校時間を思い出させる『今日の日はさようなら』。このタイプの歌は個人的にはシュミじゃないんだけど、原坊が歌うと「あ、、、いいな」って思っちゃうから不思議。

 そしてアルバム『MOTHER』から、11年ぶりの『花咲く旅路』。世の中は、ああ世の中は何故こんなに急いてと流れてくんでしょう…。

 僕はつくづく歌謡曲が好きなんだなぁ〜… と再確認。
 そしてこれまでの原坊の3枚のオリジナル・アルバム同様、とっても心あたたまる逸品です。

 


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