No.1 ザ・スパイダース・アルバムNo.1

ザ・スパイダース

 

 日本のロックを語る時に、GS(グループ・サウンズ)が何となくないがしろにされがちな雰囲気にあるのは、いまや「グループ・サウンズ」って呼称がえらく古臭く感じてしまうから… ってのがない? でも「グループ・サウンズ」って括りがちょっと気恥ずかしいのは、その当時のバンド自体にもやっぱりその責任があるんだよ。当時の空気(商業主義化)の中では仕方なかったのかもしれないけど。

 だけどね、日本に“バンド”ってものを定着させたのは紛れもなくGSだし、ロックの道を切り開いてきたのもGS。中でも商業的人気とは別 に、とてつもなくカッコいいことをしていたのがスパイダースだった。

 僕はまだ就学前だったから、当時は音楽的なことはわからなかった。だからここでのレビューは自分がロックを好きになって、あらためてスパイダースを聴いた大人としての感想。『味覚糖・トップバラエティ』というスパイダースのテレビ番組も観ていたけど(これがホント面 白かった)、まだ5歳だったからね〜(爆)

 で、今回ピック・アップしたのは、ファースト・アルバム『ザ・スパイダース・アルバムNo.1』。
 このアルバムはまだGSという呼称すらなかった66年、何と全曲オリジナルで発売された。この全曲オリジナルというところに、商業主義という魔の手がまだ伸びていない(笑)ことが窺える。それと、ビートルズの影響ね。

 アルバムの音は、キンクスっぽいかな…。兎に角「リバプール・サウンド」を意識していて、自ら「トーキョー・サウンド」と名乗っていたそうな。
 セカンド・アルバム『ザ・スパイダース・アルバムNo.2』が当時のレパートリーのカバー(ビートルズ、アニマルズ、ローリング・ストーンズ、デイヴ・クラーク・ファイヴ、チャック・ベリー他)であることから、その時代の日本のビート・バンドの音がどんなものだったか、またスパイダースがどんな視点でオリジナルを作ったかが見えてくる。

 三・三・七拍子体質の日本人が馴染みやすいようにと3拍子(?)で作られた『フリ・フリ'66』は、日本初のGSオリジナル曲で、英語バージョンは米・英・欧でもリリースされた。マチャアキの「さんびょぉぉぉ〜し」が懐かしい(笑)。

 一転してソフィスケイトされた印象の『ノー・ノー・ボーイ』は、詞もメロディも素晴らしい。ブリッジやエンディングでの妙なコードの挿入は、ビートルズの影響か。かまやつさんのセンスに脱帽。

 『リトル・ロビー』と『ロビー・ロビー』の“ロビー”とはクックロビン(駒鳥)のことで、駒鳥ィなステップを流行らせようとしていたらしい(橋幸夫にしろ中尾ミエにしろ、何かとステップを流行らせようとしていた時代だからね(笑))。

 東和映画の川喜多和子さんの英詞による『ビター・フォー・マイ・テイスト』は、海外市場を狙ったにしては地味な曲。もともと『失恋の味』という日本語の歌だったらしい。後年詞を替え『午前3時のエレベーター』という歌になる。

 『ミスター・モンキー』はテレビ番組用に出したシングル『モンキー・ダンス』のタイトルを替えたもの。その番組に携わっていた、作詞家としてデビューする前の阿久悠が詞を書いている。

 ストーンズの『ひとりぼっちの世界』をモチーフにした『ヘイ・ボーイ』は、後にこぞってカバーされるガレージのクラシックともなってる傑作。

 『ワンス・アゲイン』と『落ちる涙 』は、スパイダースやタイガースの衣装を担当したブティック「ベビードール」のオーナー岩元梶子さんによる英詞。彼女は当時のスノッビーたちの溜まり場「キャンティ」の主人でもあり、この「キャンティ」の先進的な感覚の情報が、スパイダースの先端的センスのヒントになっていたらしい。曲は、大野克夫のVOXがかっこいい。

 『ラッキー・レイン』は、アルバムにアクセントを付けるお洒落なアコースティック・ナンバー。

 『しずかに』は、ビートルズのクラシック傾倒に感化されて挑戦したバロック調(クラシックの曲に詞をつけたらしい)。

 ラストはまたスパイダースらしいナンバー『ゴー・ゴー』の絶叫。

 スパイダースはずば抜けてファッショナブルだった。
 ファッション・センスだけじゃなく、音楽や流行に対する姿勢が、他のGSとは一線を画していた。
 かまやつひろしの新しモノ好きの感覚は、単なるミーハーに留まらず、きちんと研究・昇華に向いていた。
 一方、堺正章の芸を追求する意識は、誰かから指図を受ける前にプロフェッショナルだった。
 こうした一見地道なエネルギーが、真にカッコいいことでオシャレなことだと、スパイダースは教えてくれた。
 現在も活躍しているそれぞれ(田辺昭知、大野克夫、井上孝之(尭之)、加藤充、かまやつひろし、堺正章、井上順)が、今日でもやはりとてもお洒落だ(若干1名、どうしているか知らないが(爆))。

 そのオシャレも、ヒット・メーカー浜口庫之助による『夕日が泣いている』を歌ったことで、スパイダースは放棄してしまったように僕には見えた。
 別項に書いた通り、僕は浜口庫之助が好きだし、希有なソング・ライターだと尊敬もしているが、『夕日が泣いている』や『風が泣いている』は、僕の想うスパイダースではない。
 GSが空前のブームになっていく中、一般ウケしないかまやつひろしのスパイダース・サウンドじゃ、セールス的に厳しかったのかもしれないけれど…。

 いまGSをほじくり返してみると、草の根的なバンドに、ほんとシブイことをやっていた連中も多く、故に『カルト・コレクション』みたいな復刻CDが出たりもするんだろうけど、ちゃんとお茶の間的人気もあったスパイダースは、そうしたマニアックな連中にも引けを取らないくらいシブイ。
 そのシブさがタイガースに負けてしまう敗因なんだろうけど、(当人たちの焦りとは別に)そういうところがブル・コメでもないテンプターズでもオックスでも、ましてやアダムスでもない(笑)スパイダースのとてつもない魅力なんだと思う。

 


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