PIC-NIC コペルニクス
作詞:佐伯健三 作曲:松浦雅也

PSY・S

 

 孤独はひとりでは見られない。
 どうしようもない孤独に苛まれた時にかならず、頭の中でぐるぐる回る歌がある。PSY・Sの『コペルニクス』。

 14世紀、航海に出た船乗り達が船の位置を知る為に天体を頼りにするところから、天文学の研究は盛んになった。観測技術が進むと、天動説では説明のつかない事が増え、天動説に疑問を抱く学者も現れる。
 コペルニクスは、宇宙は数学的にもっと合理的な運動をしているのではないか… と考え、太陽を中心に置き、そのまわりを地球をはじめとした惑星が回転しているという宇宙の姿を考えた。これが現在「コペルニクス的転回」と呼ばれる地動説だ。
 しかし聖書の記述こそを真実としていた当時、コペルニクスの先進的な考えは過激とされ、地動説を述べた著書は書名を『天球の回転について』と変えられ、彼の死の間際にやっと出版される。

 孤独はひとりでは見られない。
 ひとりぽっちでいることは孤独ではない。愛されないのが孤独なのではない。たくさんの人に囲まれながら、誰も自分のことをわかってくれない… それが孤独なのだ。
もしも誰かのセリフが
癪にさわっているなら
朝の寝ぼけたベッドで
猫になってるその子と会いましょう

裏返したら愛だと 気付いたときには
憎まれ口を聞かせた みんなに会えない
 自分が特別だなんて思わない。大人は子供よりも利巧で、そう、知らないふりで本当はわかってくれているものだと信じて大きくなってきた。信じて大きくなって、現実は大人も皆馬鹿ばかり、普通 だと疑いもしなかった自分の言葉はいつでもすれ違って誰にも届かない。僕の云っていることが理解されるのに、10年からの日々を費やさなければならない。しかも僕の言葉が正しいと証明された時には、かつて僕がそれを発言して誰からも理解されず哀しい涙を流していたことなど、一人も憶えちゃいない…。
もしか言葉を持たずに
生きてゆけたらどうする?
すぐに夕焼け見ながら
からだ寄せあい彼方に駈けてゆく

真心だけじゃすべては 伝わらないけど
あきらめた頃何かが 変わることもある
 この歌に『コペルニクス』というタイトルを付けたセンスに脱帽。『コペルニクス』はシンプルに見えて、実はとても奥が深い歌。
 まったりしたメロディが、例えばこれ1曲だけを取り出してしまうとワカラナイんだけど、この『PIC-NIC』というアルバムの3曲目に入ることで、とても重要な役割を果 たすことになる。
 そういった意味ではこの『PIC-NIC』は、恐ろしくバランスのとれたアルバムになっている。

 こうしたプロデュースの仕方は、日本のフォークやロックが歌謡曲に取って変わる時代のアルバムによく見られるアプローチだけど、これは松浦雅也の歌心があればこその演出なんだろう。

 そもそもこの『PIC-NIC』を買ったきっかけは、ラジオで『Another Diary』を聴いたことだった。営業車の中で、仕事でへこんだ気持ちのまま、コンビニで買った弁当にも手を付ける気にもなれず、シートを倒して青空を眺めていたら、CHAKAの懐かしさを漂わした歌が聴こえてきた。
ねぇ 幼なじみだね
違う空の下感じていた
ねぇ 初めてのときに
回る思い出教えてくれる

ドーナツ色の瞳で
ブランコに揺られてるあのころ
思わぬ告白に クシャミして始まる
恋の甘酸っぱいお伽噺は見せられない

心の奥にしまった宝の扉 誰かが鍵を
いつかはいきなり開けてくれるよ

ねぇ 幼なじみだね
回る思い出笑っている
ねぇ おひさまの下で
丸いロマンスお散歩して
ねぇ 幼なじみかな
うたた寝の中夢見ていた
 グッときた。

 アルバムを買ってから、サエキけんぞうの詞だと知るのだが、「同じことを考えてる人がここにいた」と、妙な共感を抱いたものだ。
 もちろん、それを支えるメロディもアレンジも抜群に素敵で、歌うCHAKAの声はどこまでもキュートだった。

 他にも、当時画期的にカッコよかった『Woman・S』、決して巧くはないんだけど何故か惹かれるギターの『Down The Slope』、黒っぽい『Ready For Your Love』、切ない『ジェラシー"BLUE"』、そして対になっているという名作『Brand-New Menu』と『Another Diary』等、アルバムをトータルに見るとわかる「真実はひとつではない」加減が、自分をやっと愛おしく思えるように癒してくれる。

 そして『コペルニクス』の
裏切りなんてほんとは 素直な証拠ね
すれ違うならずれてる 私のせいです
 の一節が、僕を孤独から救ってくれるのです。

 


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