LiveApollo Everytime You Go Away
D.Hall

HALL & OATES

 

 もうどれだけホール&オーツのベスト盤が出ているのか知らないけど、ホール&オーツほど“ベスト盤”の組みやすいアーティストもないんじゃないかな。
 “ベスト盤”と云っても何曲かは聴いたことのない歌があったり、中には「ベストを尽くした盤なのか?」と皮肉のひとつも出ちゃうような知らない歌ばかりが並んだ“ベスト盤”しか出せないアーティストがいたりもするが(笑)、ホール&オーツの場合、耳馴染みのある曲だけでちゃあんとコンピレーションが組める。兎に角ヒットしてたもんね〜、80年代の彼らは。

 彼らの全盛期、僕は大学生だった。で、その頃の友人は皆『Private Eyes』('81)『H2O』('82)のアルバムを持っていたし、『Rock'n Soul Part 1』('83)に至っては、普段読書をしないヤツでも『窓ぎわのトットちゃん』を読んでいたのと同様、誰でも持っていたような印象がある。

 僕はホール&オーツのアルバムを1枚も持っていない。
 わざわざ買わなくともラジオをひねれば彼らの歌声は洪水のように流れていたし、何より“猫も杓子も持ってる”アルバムというものに、とっても抵抗があった。

 初期のホール&オーツは、70年代のシンガーソング・ライター風のアコースティックな感じだった。ちょっとエモーショナルな捻りも入ってはいたけど。

 それが80年の『Kiss On My List』で、その後のホール&オーツを象徴するようなスタイルが出来上がる。メジャー・セブンスのコードによる「チャチャチャ・チャチャチャ♪」の8分の刻みだ。『Kiss On My List』は、全米チャート1位を記録する。

 続くアルバム『Private Eyes』では、シンセの無機質なサウンドをより多用するようになり、時代の一歩先を行くような最先端のイメージを定着させる。兎に角『Private Eyes』は流行った。
 ただ僕個人の感想としては、『Kiss On My List』や『Private Eyes』のような耳当たりの良い曲よりも、次のシングル『I Can't Go For That(No Can Do)』の方が、ソウルフルで好きだった。このあたりは後から辿って知ることになるのだが、ホール&オーツはもともとそうしたソウル・フィーリングを得意としていたようだ。

 『H2O』からは『Maneater』が全米4週1位という大ヒット。モータウン・サウンドを80年代風にアレンジしたようなこの曲が、当時どういうわけか僕はキライだった。サウンド自体が生理的に合わなかったのかもしれないし、“猫も杓子も”の中にソリの合わないヤツがいたからかもしれない(笑)。
 ただ、『One On One』やカバー曲の『Famiryman』といった肉感的なソウルフルなナンバーを聴くにつれ、彼らの真の骨頂はこっちにあるのではないだろうかという気がしていた。

 その後彼らがどうしたのか、それ程のファンじゃない僕は知らない。チャートには姿を見せなくなった。とかく時代を先んじる音楽をやっているものは壁にぶつかりやすい。行き詰まってしまったのか、解散してしまったのか、そのあたりの事情はまったく知らなかったが、最近“来日”のニュースを目にする。またまた“ベスト盤”も出たようだし。ご健在でした(笑)。

 で、ここからが本題なのだが、僕が唯一買ったホール&オーツのレコードが『A NITE AT THE APOLLO LIVE !』というシングル盤。
 85年の『Live At The Apollo』というアルバムからのシングル・カットで、『The Way You Do The Things You Do / My Girl』のメドレーと、B面に『Everytime You Go Away』が収められている。

 『Everytime You Go Away』は、お馴染みポール・ヤングのヒットで知った。『プリンス・トラスト』で3回歌ったのにはさすがに「ちょっとな〜」だったが(笑)、フィラデルフィア・ソウル風のこの歌がとても好きだった。
 クレジットを見ると、ダリル・ホール作。アルバムを繰ると確かに『Voices』('80)に入っている。この1曲のためだけに『Voices』を買おうかと思っていた矢先、レコード店でこのシングルを見つけた。

 アポロ・シアターと云えば黒人音楽の殿堂。85年の再オープンのこけら落としにビリー・プレストン、ジョー・コッカー、フォー・トップス、テンプテーションズ… というアーティストに混ざってほホール&オーツも出演していたのがこれ(他にもボーイ・ジョージ、ジョージ・マイケル、ロッド・スチュワートなどの顔もあった)。
 コンサート会場の外では、ブラック・ナショナリストたちによるコンサート・ボイコットのデモ行為もあったという。このあたりの黒人音楽に対する感情の摩擦は、日本人の僕にはよくわからないが、この『Everytime You Go Away』のメンフィス・ソウル風の熱唱が、「音楽はひとつ」であることを伝えてくれているのは確かだ。
 競演はデビッド・ラフィンとエディ・ケンドリック。

 


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