砂山 World Hits!? of Southern All Stars

関口和之&砂山オールスターズ

 

 「フリー・ジャズは出鱈目ではないのか?」
の問いに、あるジャズ・ピアニストが、ピアノトリオの演奏が成立する為の条件を3つ挙げている。
  1. 楽器を演奏できること
  2. 共演者がやっていることを聴きとれること
  3. スウィングできること
 音楽的に自由になりたいと思う時、二つの方向が考えられる。
 一つは、音楽の枠組みを拡げ、伝統や約束ごとに縛られないようにすること。
 もう一つは、音楽が成り立つところのルールをよく理解して、それを駆使する技術を磨く方向。
 後者は、そのこと自体が目的になると、練習の為の練習となってしまって、音楽する楽しさも失いかねないのだけど。

 そんなわけで多くのミュージシャン志望者は、前者の自由の方を選択しがちなのだけれど、楽器を演奏するということは、音楽的に自由になることと音楽の歴史の狭間で個人個人がどう関わっていくかということに委ねられるので、後者を選んだ人の演奏に胸打たれることが多いのも事実で。

 僕は高校生の時、あるブラス・バンドに所属していてトロンボーンを吹いていたんだけれど、当時結構苦痛だったそのアンサンブルも、いまとなってはとっても良い経験だったと思っている。
 ひとり自己流でギターを修得し、ギターを中心にした所謂ロック・スタイルのバンドをやっていただけでは、音楽に対する考え方もレベルも、いまとはまるきり違ったものになっていたと思う。

 ひとつ云えるのは、いまロックやジャズのバンドにあって、ブラス楽器のパートを受け持つ人間は、或程度楽器や合奏に対する基礎がしっかりしているということ。
 トランペットやサックスなんて、フツーの家にはまず転がってないからね(笑)。大抵は小学校や中学校で吹奏楽部に入って、それから始めた人が多いんじゃないのかな? だから、そうした場で、苦痛とも云える基礎訓練をしっかり受けてるんだよね、望むと望まないとに関わらず。そこから管弦楽団に行ったか、ヤクザなロック・バンドに行ってしまったかは、その人が選んだ道なだけで。

 見掛けのとっぽさに反した、そういう演奏者としてのインテリジェンスが見えるって意味で、僕は東京スカパラダイズ・オーケストラが大好き。センスも良いし、頭の良さも窺えるし、肝心のプレイもしっかりしている。
 そして、この関口和之&砂山オールスターズの『World Hits!? of Southern All Stars』にも、そんなスカ・パラと似たようなパッションが感じられる。

 レゲエ、ボサノバ、キューバン、ハワイアン、ホットロッド、ケルト、ファンカラティーナ、ブレイクビーツ、ダブ、アンビエント… あらゆる音楽形態でアレンジされたサザンのナンバーを聴くと、あらためて桑田佳祐のソングライターとしての力量 が感じられる。どころか、桑田佳祐というボーカリストに桑田の曲を委ねずに、こうしたしっかりしたセンスのプロデューサーなり演奏家にプレイしてもらった方が、生きてくるのではないかとさえ思ってしまう。

 シャレで作ってしまったかの如き粋さがあるアルバムだけど、流して聴いて心地よく、聴き込んで気付くエッセンスも有りで、なかなかに素晴らしいアルバム。
 何よりこのコラボレートからは、共演者とのコミュニケーションに際して、自身の意図をきっちり音に表すという、アンサンブルの基本的楽しさが感じられる。

 自分が楽しみながら、サラっと高度なことができちゃう… これが音楽が成り立つところのルールをよく理解して、それを駆使する技術を磨いたプレイヤーの醍醐味だね。

 


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