GN Mr.Moonlight Goodnight Mr.Moonlight
作詞・作曲 斉藤哲夫

斉藤哲夫

 

 大ヒットが仇になることってある。

 斉藤哲夫の『いまのキミはピカピカに光って』がそう。宮崎美子が木陰でこっそり水着に着替えるミノルタの、糸井重里と鈴木慶一の手によるCMソング。
 “君”をカタカナ表記にしたり“ピカピカ”なんて言葉を恥ずかしげもなく使うイトイさん独特の軽さと相まって、斉藤哲夫をよく知る人にはそんなイメージはないと思うんだけど、一般 的には“一発屋”のレッテルを貼られてしまった。
 まあ本人も当時「ザ・ベスト・テンに出ちゃったよぉ〜」って嬉しそうに云ってたり、『ひょんなことから有頂天』なんて歌も歌ってたくらいだから、まんざらでもなかったのかもしれないけど。

 この斉藤哲夫という人、レッテルを貼られやすいタイプなのか(笑)、70年代初頭には“若き哲学者”というレッテルを貼られていた。フォーク好きの人だったら、こっちのイメージの方が強いのでは?
 『悩み多き者よ』『君は英雄なんかじゃない』『斧をもて石を打つが如く』『されど私の人生』なんて歌をひっさげ、中津川フォークジャンボリーに登場した彼は、たちまち当時の若者の支持を受け、裏では左翼系の人達に詰め寄られるなんてエピソードがあるくらいの影響力を持っていた。日本のカーペンターズを気取っていたオフ・コースまで『悩み多き者よ』を歌っていたし、『されど私の人生』を拓郎が自分の歌のようにして歌っていたのは有名な話。

 でもね、デビューアルバムの『君は英雄なんかじゃない』('72)、高い声ではずれているように歌う独特のボーカルや、シニカルな詞が小難しい連中にウケたが為に、ちょっとアングラなイメージがつきまとっていたけど、ちゃんと聴いてみるとメロディはポップだし、どこかビートルズを彷彿とさせてるんだよね。わかりにくいかもしれないけど。

 セカンドアルバム『バイバイグッバイサラバイ』('73)になるとそれは顕著で、哲学者もいいけれど、メロディーメーカーとしての斉藤哲夫にもっと注目しては? と僕は思っていた。

 続く『グッド・タイム・ミュージック』('74)は完全にポップアルバム。バックコーラスに山下達郎の声もはっきりと聴いてとれる(笑)。
 こうなると、メッセージ性の強い“若き哲学者”を求めていたファンからは、見切りをつけられる。でも、これが斉藤哲夫の本来の姿なんじゃないかとも思える。
 ブライアン・ウィルソンやマッカートニーを想わせるメロディと斉藤哲夫の個性的なボーカルが、チト河内グループを母体とした演奏に見事にマッチしている。これはちょっとあなどれないアルバム。

 ジョン・レノンの3回忌に吉祥寺の「のろ」という店で、ウチワだけの追悼パーティーみたいな催しがあって参加したことがあるんだけど、そこに斉藤哲夫さんも来ていた。
 斉藤哲夫さんはアコースティック・ギター1本で『Being For The Benefit Of Mr. Kite!』ほか数曲を歌ったと記憶しているんだけど、途中、某ロック・グループの連中から茶々が入った。
 「なんでお前がジョン・レノンの追悼なんだよ!」
 「お前はフォークじゃないか!」
 大喧嘩になり、座は一気に白けた。
 音楽をスタイルやカッコだけでしか見られない奴には判らないかもしれないが、はっぴいえんどをフォークでなくロックだと云うのであれば斉藤哲夫もロックだし、ビートルズの匂いがプンプンしてる。そこを感じとれないようじゃ、音楽をやっていくレベルじゃないな… と僕は思っていたが、案の定そいつらは消えてしまった(と云っても、斉藤哲夫も消えてしまったようなもンだが(笑))。

 僕が高校生の頃、ラジオ関東(現・ラジオ日本)で『ウルトラワイド電撃放送局』という月-金の帯番組があった。
 パーソナリティは、チャー、浜田省吾、中島みゆき、武田鉄矢、遠藤賢司、、、そんな面 々を記憶している。各自まだそれほど売れる前だったのと、ニッポン放送の高島ヒゲ武の裏番組だったということもあって、いま誰に訊いても「憶えてない」と云われるけれど、僕はほぼ毎晩その番組を聴いていた。
 その番組のエンディングに流れていたのが、斉藤哲夫の『Goodnight Mr.Moonlight』。

 恐らくビートルズの『Mr.Moonlight』に掛けているんだと思うけど、あんなシャウトをしているわけではなく、やさしい子守歌のような曲。歌詞も、よく読んでみるとな〜んにも大したことは云っていない(笑)。
 だけどこの歌、テータム・オ・ニールの『ペーパームーン』調のジャケットも含めて、とっても好きなんだよね。
 あのラジオ番組は、深夜0時頃終わってたのかな? ちょうどそんな時分にぴったりの歌で、パーソナリティのお喋りが消えたあと、間奏のハーモニカやラストの「ミスタ〜ム〜ンラ〜イ♪」なんて声が聴こえてくると、なんかやけに切なくてね。
 “月”の歌の中では、『十五夜お月さん』と並ぶくらい好きな歌(笑)。

 あ、その頃東京12チャンネルで放映した『ピエロ』の弾き語りも良かったな。

 


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