大貫亜美 Honey
作詞:大貫亜美 作曲:Andy Sturmer

大貫亜美

 

 良い作品っていうのは、音楽にしろ絵にしろ映画にしろ、その制作の過程が見えないというか、まるで初めからポンとそこにあったような印象がある。

 昔のポップスってどれも3分以下で、でもちゃんと必要最小限のことは伝えてくれていて、その余韻に恋に似た甘酸っぱさや切なさがあって。
 いまの曲って、どれも長いよね。ビートルズの『ヘイ・ジュード』がシングルぎりぎりの7分たったって、あの頃それがとてつもない大作に思えたけど、いまは7分の曲なんてザラでしょ。
 3分で表現できる内容を7分で伝えようとするのは、僕にはとても野暮に思えて、そんな風にこねくりまわした多くの歌っていうのが、まったくもって好きになれない。必要以上に長いギター・ソロや、コンサートに於けるドラム・ソロなんて愚の骨頂。
 優れた作品はすべて、足し算ではなく引き算で成り立ってると僕は思う。

 大貫亜美の『Honey』は、いまどきの歌にしては珍しい2分47秒。珍しいだけに、あッという間に終わってしまう印象もあるけど、どうやってこの歌が出来上がったのかわからない、初めからそこにあったように感じる名曲。
 チープなリズム・ボックスを配したバッキングと、亜美ちゃんのボーカル処理がとても涼しげで、夏に聴くにはピッタリ。そういえば、井上陽水の『Summer』も、チープなリズム・ボックスの音を活かした涼しげな佳曲。あれを彷彿とさせる。

ぼくらはやっと出会えて
今のところかなりいい感じ

 このアタマの歌詞が抜群。
 テレビで観る亜美ちゃんしか知らないので、僕は彼女をアッパラパーなコだとばかり思ってた。だが、これに続く歌詞で、実は相当なツワモノと見た。

たまにはがんばりたい
夢の中ででもアリかな

 これだけで、僕は大貫亜美に恋してしまった。
 Puffyの歌はそれまでも好きだったけど、別段この二人のキャラには何の興味もなかった。だけどこの大貫亜美のソロときたらどうだろう。声も琴線に触れる。音程もかなりしっかりしている(同時に出た由美の方の歌いっぷりはちょっとね〜(笑))。ハモも良い。

ただ見つめあえればおなかいっぱい
なんだけど チューはした

 ははは。こういうのに僕は弱い。
 メロディーもゆったりとして、それでいてちょっとビビッド。

JELLYFISH この作曲者、Andy Sturmerという男。僕はそれまで全然知らなかったのだが、「Puffy」の命名者でもあるらしい。
 過去、JELLYFISHというバンドをやっていて、90年に2枚のアルバムを残し、解散している。
 ところがこのJELLYFISH。聴いてみるとただごとじゃないくらいにスゴイ(…というか、僕好み)。ビートルズ、ビーチボーイズ、クィーン、XTC、、、そんなエッセンスを踏襲したバンド。『Honey』が僕の急所を突いたのも無理はない(笑)。
 Andy Sturmerというアーティストがどういう経緯を辿って、JELLYFISHからPuffyに着いたのかは寡聞にしてわからないが、そのソング・ライティングのセンス、音楽に対する姿勢には、見過ごしてはならない貴重な才能が隠れている。

 話を『Honey』に戻して。
 この短いキュートなポップスを、紙一重でとてつもない名曲にしてしまっているのは、やはり歌詞にその鍵がある。
 ラスト、歌の纏め方は、生半可な力量じゃない。

いつでも泣いたっていいよ
自分勝手はよくあることよ
ただ見つめあうだけじゃちょっと足りない
年頃の証拠でしょう
そんな人がいて

 「そんな人がいて……」ジャガジャン♪ で終わってしまうこのあっけなさに、ポップスの神髄はある。そしてまた聴いてしまう。

 


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