BlanceOfPower Balance Of Power
Electric Light Orchestra

 

 今年前半期の一番のニュースというか、小踊りしたくなるような驚きは、E.L.O.の復活(?(笑))だ。
 前作の『Balance Of Power』から数えると15年ぶり、ジェフ・リンのソロアルバム『Armchair Theatre』からも11年ぶりだそうで(トラベリング・ウィルベリーズもそのあたりだったよね?)、気持ちが高ぶるのもいたしかたない。

ZOOM このE.L.O.の新作『ZOOM』は、一言で云えば「E.L.O.名義のリンのソロアルバム」。
 ギター主体のサウンドに、小編成のストリングスがかろうじてE.L.O.風味を添えてる程度で、ジョージ・ハリスンやリンゴ・スターのクレジットもあるものの、作曲は勿論、楽器もほぼ全てリンが一人でやっていて、まさに独壇場。
 …だけど。これがまごうことなきE.L.O.に仕上がってる。コード進行、サウンドの重ね方、ジャケット・デザインも含めて。
 そんなことがどうしようもなく嬉しいんだけど、今回はこの『ZOOM』は置いておいて、前作『Balance Of Power』の話。

 E.L.O.とは、Electric Light Orchestra の略。「ロックとオーケストラの融合」といった構想を練っていたロイ・ウッドが、ジェフ・リンを誘ってザ・ムーブを結成。そこから派生したプロジェクトがE.L.O.だった。
 '71年に最初のアルバムを出した後、ウッドは脱退してしまうが、リンが中心となってバンドは活動を続け、きちんと整理されたきらびやかなストリングスを売り物にしたそのポップ・サウンドは70年代の中頃から末にかけて、多くのヒットを飛ばした。

 しかし80年代に入り、レコード会社の販促戦略の失敗もあって、E.L.O.の人気にも翳りが見え始める。バンドのメンバーも次々に抜け、バンド自体の活動も停滞気味になっていった。
 セールス的に惨敗だったアルバム『Secret Messages』('83年)のあと、オーケストラとは名ばかりのかろうじて残った3人(と云っても、実質的には2人)で録音されたのが、『Balance Of Power』('86年)だった。

 この『Balance Of Power』も実は、全盛期のE.L.Oの特徴であった華麗で重厚なストリングが一切使われてなく、代わってシンセサイザーが多用されている為、音楽評論家には酷評されていた。E.L.O.ファンの間でも評判は芳しくなく、だからというわけではないだろうが、結果 的にE.L.O.のラスト・アルバムとなってしまった(今年の『ZOOM』が出るまでは)。

 だけど、僕はこのアルバムが大好き。

 まず、ジェフ・リンの書く秀逸なメロディ。かつての『Discovery 』『Xanadu』あたりのポップの王道を行くメロディ・ラインが復活し、美しいハーモニーで包まれている。
 やはり音楽はメロディだよ、メロディ。

 そしてサウンド。
 ジェフ・リンの華麗できらびやかなサウンドは、僕なんかからすると「オーバー・プロデュースなのでは?」と引いてしまう感がなきにしもあらずで、それは例えば“ゴージャス”って単語がとっても田舎臭い響きなのと同じで。だから正直、ビートルズの復活劇のジェフ・リン・プロデュースによる『Free As A Bird』や『Real Love』なんて、そのオーバー・プロデュースがせっかくの歌の良さを台無しにしちゃってる気がしないでもない。
 それがこの『Balance Of Power』では控え気味で、歌自身が持つ卓越したメロディ・ラインが際立っている。1曲目の『Heaven Only Knows』や『So Serious』など、名曲だ。

 本アルバムからシングル・カットされたのは『Calling America』。最高位は全米18位 。
 先に挙げた『Heaven Only Knows』や『So Serious』を切った方がもっとヒットしたのでは? …という声も多かったが、僕は何て云っても『Calling America』。
 これは本当にキュートなメロディ・ラインのポップス。イントロから歌に入る瞬間、ホントに胸がキュンとなるんだから。ポップスはこうでなくっちゃ。
 こういう軽いメロディは“名曲”の冠は与り難いけど、胸を張って「これは素晴らしい曲だよ!」って云ったっていいんじゃないかと、僕は鼻の穴を膨らませたい。

 僕はこの86年、アメリカにいて、カー・ラジオから流れる『Calling America』を聴きながら、カラッとした風を浴びながらハイウェイを飛ばしていた。そんなシチュエイションにもピッタリの曲。
 イギリス出身でありながら、そんなローカリティを感じさせないのもリンの曲の良いところ。

 何はともあれ、この15年プロデュース・ワークからリンの匂いを嗅ぐくらいしかできないでいたのが(パフィーの『アジアの純真』なんてのもあったけど(笑))、いきなりのE.L.O.の復活で、勝手に気持ちは否が応でも盛り上がってるけど、まだまだまだまだジェフ・リン先生にはロックの何たるかを見せつけてもらいたいと切に願って。

 


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