シングルス・レビュー

郷ひろみ

 

 『男の子女の子』を聴いた時には、正直云ってがーんときた(笑)。でも、小学校5年生の男の子が「きみたちおんなのこ〜、Go! Go! ♪」なんて唄える空気じゃなかったからね〜、当時 (爆)。

 TVCMで、「ただいま〜若さの〜真っ最中〜、サンキスト〜・ドリン〜ク〜♪」てな歌に合わせて、自転車で坂道を漕いできた郷ひろみが「からだにいいこと、何かやってる?」って訊くのがあって。その不思議な声に魅かれた。

 それでついコソコソ買っちゃったのが『小さな体験』(笑)。これは名曲。
 まず出だしの「どうしてそんなに、きれいにな〜るの♪」のブラスとギターのユニゾンのリフ、そこに絶妙に絡むハンド・クラップが文句無しにカッコイイ! ロックだね〜、これは。
 「誰が〜誘いかけ〜ても、知〜らないフリ〜…♪」の繰り返しでフェイド・アウトしちゃうところにも降参。

 『愛への出発』も前作同様「さあ〜、初めてふた〜りに〜、別 れの日が〜きた〜♪」と、導入的なイントロでスタートするんだけど、こちらのメロディはグッと歌謡曲。

 続く『裸のビーナス』は、ジャケ写 こそひっくり返ってしまったものの、イントロのカッコ良さ、歌い出しのメロディ「どうしたの、ついて来ないのかい〜♪」のキュートさ、「こ〜いをしたくなるよ〜♪」のひろみの声遣い、もうどこを採っても秀逸。詞の世界も狂おしいほどの傑作。

 『魅力のマーチ』は、ソウルフルな歌謡曲というか、エンディングの歌とセリフの掛け合わせが不思議な雰囲気を醸し出した佳作。

 そして『モナリザの秘密』。「きみはモナリザ、ぼくを狂わす、謎の微笑みよ〜♪」と高揚させていく導入が、何故かエンディングにも用いられるという斬新な構成。ひろみの歌も、徐々にうまくなっていってるのが聴き取れる。

 マイナーなメロディが続いた後は、ドゥ・ワップの陽気なナンバー『花とみつばち』。ロックン・ロール調なんだけど、スタックス的なR&Bの匂いもする名作。
 なんと云っても「どうでもいいけど、帰るのいるの? 夜明けだよ♪」って歌詞がGood!
 Aメロともサビとも違う旋律の「言葉はいらない〜、愛して愛され〜♪」のエンディングに至っては、否が応でも「この歌はいいな〜」と云わされてしまう(笑)。

 スティービー・ワンダーの『迷信』を想わせる『君は特別 』は、ジャニーズ系ダンス・サウンドのその後の指針となるようなファンキーなナンバー。
 同時期、井上陽水の『氷の世界』や泉谷しげるの『眠れない夜』等、『迷信』を意識した曲がフォーク界でも目立っていた。

 そしてひろみ10枚目のシングルが『よろしく哀愁』。タイトル通 りの哀愁的なメロディに、ロックン・ロールなカッコいいベースが絡んで、どうしようもないくらいの名曲。8分休符から入るアタマのメロディも印象的。
 「逢えない時間が、愛育てるのさ
  目をつぶれば君がいる…」
 4度進行で徐々に盛り上がっていく旋律が切ない。
 アイドルからおとなへの脱皮を狙った同棲願望を思わせる詞を歌っていた郷ひろみ当時18歳は、実はまだ童貞だったことを後に告白している。

 名曲の2番煎じを狙った『わるい誘惑』に続いて出た『花のように鳥のように』も、切なさがふつふつと湧いてくる秀作。
 歌謡曲テイストのシャッフルに、思いきり明るいメロディが載せられて、その明るさが詞のもつ悲しさを余計に引き立てている。
 「幸せつかんで ああ いいよね
  苦しいことなど ああ 忘れて
  花のように 鳥のように やさしく愛し合おう」
 ストリングスの美しさにも泣かされる。

 んな女々しさを一掃するように『誘われてフラメンコ』が続く。
 郷ひろみをデビュー時からプロデュースしていた酒井政利氏は、タイトルを先に決めて、それを作詞家に託していたという。『男の子女の子』にしろ『裸のビーナス』にしろ『よろしく哀愁』にしろ、その奇抜さは“郷ひろみ”というアイドルに絶妙にフィットし、さすがとしか云いようがないんだけど、一体どういうふうにすれば『誘われてフラメンコ』なんてワケのわからないタイトルが思い付くのだろう(笑)。こんなタイトルを貰った作詞家だって、正直困る。
 が、『誘われてフラメンコ』は名曲だ。
 「真夏の〜ォ! 匂いは〜ァ!♪」印象的な節回しの後の「素肌にこぼれて素敵さ♪」のたたみかけるようなメロディがカッコいい。「ぼくから乱れてしまったみた〜い♪」のキメと、そのあとのタメも見事!

 …と、僕はオトコでありながら郷ひろみにハマった小学生時代を送ってしまったんだけど、まわりの女のコたちが騒ぐ“アイドル”としてハマっていたんじゃないことは、当時から何となく察しはついていた。
 声が好きだった。郷ひろみの声と、先天的なあのビブラート(真似したけど、できなかった)が好きだった。そして歌。
 そのシングル・レコードを眺めていると、嫌でも目に付くのが作曲者・筒美京平の名前。
 そこでハタと気付き、それまで僕が買い求めていた数少ないレコードを引っ張り出すと、尾崎紀世彦の『また逢う日まで』、堺正章の『さらば恋人』、平山三紀の『真夏の出来事』『フレンズ』、南沙織の『17才』『ともだち』、、、、そう、それらは皆、筒美京平が作った歌だった。

 「ぼくは、筒美京平という人が作った歌が好きなのかもしれない…」

 郷ひろみの歌をきっかけに、僕の筒美京平フリークへの歩みがスタートした。

 


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