吉田拓郎 LIVE '73

よしだたくろう

 

 ビートルズにハマった最初のキメテは、ジョン・レノンの声だった。
 本人は自分の声をひどく嫌っていたそうで、テープ・スピードを変えたり、ダブル・トラックにしたり、エフェクトをかけたりと、様々な試みを施していたようだけど、その効果 も含めて、僕はジョンのアーシーな声に魅かれた。

 拓郎を好きになったきっかけも、最初は彼の声にだったように思う。

 その昔、日本の歌謡曲の歌手というものは、歌がうまい人がなるものだった。
 個性的な歌い方も含め、レコードを出してる歌手は、まあ大概が歌がうまかった(それが当たり前なんだけど)。

 そんなある日、ラジオで流れる『結婚しようよ』を耳にした。小学校4年生の時だったと思う。
 「僕の髪が肩までのびて…♪」という歌詞が取り沙汰されていたが、僕はそれより、フツーの声でその歌が唄われていることに違和感を持った。うまい歌い手のそれではなかった。
 続いてまた頓狂な声で唄う『旅の宿』という歌もヒットした。本人の姿は見たことはなかった。
 そして、僕にとって拓郎の印象を決定的にしたのは、テレビから流れ出たフジカラーのCMソングだった。
 「ハブ・ア・ナイス・デイ・イエイ・イエイ・イエイ…♪」
 単純に面白いと思った。続編の「色っぽいということはエエことなんヨ〜♪」も素敵すぎた。
 とにかく、“よしだたくろう”という名が気になりだした。

 森進一がヘンな歌を唄い始めた。どうやら、それが“フォーク・ソング”というものらしく、その取り合わせの妙が、ただ事じゃない雰囲気を漂わせていた。
 『襟裳岬』のヒットに、日本の歌謡界というものがガラガラと音をたて、変わっていく様を見たような気がした。

 その『襟裳岬』を、森進一と作曲者であるよしだたくろうとジョイントするという企画をテレビで観た。それが動く拓郎を観た最初かもしれない。
 引きずるように溜めて唄う森進一と対照的に、拓郎の歌声はサラリとして乾いていた。
 その声に魅かれた。

 吉田拓郎はキャリアの中で、幾度か声変わりをしている。
 デビュー時のキンキンしたバリトン、 CBSソニー移籍後の『元気です』『伽草子』のひょうきんな声、『ライブ'73』『今はまだ人生を語らず』の乾いた低音、そしてつま恋以降の艶を失くしたがなり声、、、
 中でも僕は『ライブ'73』に於ける拓郎の声が好きだ。

 オープニング・メドレーの『春だったね'73』の「ぼくを〜わすれた〜ころに〜♪」の「ころに〜♪」の部分がなんとも云えずイイ(笑)。
 B面冒頭のMC「しっかりしてるよ!」の声も良い(この声が、件のTV番組の声に近い)。

 余談だが、この『ライブ'73』というアルバム、ボーカルのレベルが低いのだが、MCは殊更低く、おまけにぼそぼそ喋っているので何を話しているのか非常に聞き取り難い。オープニング・メドレーの後のMCを聞こうとステレオのボリウムを上げ、3曲目の『君去りし後』のどデカイイントロが出てきた時、何度肝をつぶしたものか(^o^;

 拓郎のライブ・レコードについては、アフレコの多用など、問題点を指摘する向きも無くは無いが、この『ライブ'73』は日本に於けるロックの名盤だと僕は思っている。

 ライブ・アルバムというと、それまで発表した楽曲の中から選曲され演奏されたものが収められるというのがまあ通 例だが、このアルバムの殆どの曲は書き下ろしである。過去の曲についても、ボブ・ディランよろしく、アレンジが思い切り変えられている。当時の吉田拓郎の勢いを如実に表している。
 編成も高中正義(G)、松任谷正隆(Org)、猫のメンバー、それにストリングスとブラスのセッションを加え、震えがくるような高揚感を出している。

 そして、もう聴くことの叶わない拓郎の“あの声”がある。

 


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