Big Pink Musuc From Big Pink
The Band

 

 ドラッグと結びついたサイケデリック・ムーブメントや、ニュー・ロック、アート・ロックといった“新しさ”を求めて変わろうと(というか、それが最先端なんだと誰もが飛びついていた)していた60年代後半のアメリカで、4人のカナダ人と1人のアメリカ人によって結成されたザ・バンドは、“変わらないアメリカ”を抱えて、独自の骨太な音楽を演奏し続けていた。

 ロックン・ロール、R&B、ブルース、カントリー、ゴスペル、ニューオリンズ、デキシーランド… そうしたアメリカが産み出した音楽のルーツをひたすら追い求め、泥臭く、黒く、そして根本的な白さを擁した“失われつつあるやさしさにあふれたアメリカ”の姿を彼らが演奏しえたのは、異邦人だった彼らのアメリカに対する“憧れ”だったんじゃないだろうか?

 僕はこのザ・バンドの音が心底好きだ。

 ザ・バンドの音を聴いていると、この音楽がどのようにして作られたのかが、いつも不思議になる。
 ロビー・ロバートソンの形而上学的色合いを持つピッキング・ギター、レボン・ヘルムのタイトでキュートなドラム、リック・ダンコの大人なベース、悲劇的な終焉に消えたリチャード・マニュエルのナイーブな音作り、そして何を考えてるのかさっぱりわからないガース・ハドソンのオルガン… これ程までに個性の違う(というか、合わなそうな(笑))5人の、めいめい好き勝手にプレイしているとしか思えないその音が絶妙にフィットし、比類無い心地よさを持ったグルーブを醸し出している。
 “手触り”のある音楽とでもいうのだろうか、このアンバランスなバランスが歴史的名盤『Musuc From Big Pink』やセカンド・アルバム『THE BAND』には息づいていて、聴く者の気持ちを高揚させる。

 さて、エリック・クラプトンにクリームの解散を決意させたとも伝えられるこの『Musuc From Big Pink』だが、ディランの『I Shall Be Released』や映画「イージー・ライダー」の中でデニス・ホッパーとピータ・フォンダがチョッパー型のバイクで荒涼とした風景に続くハイウェイを飛ばすシーンに使われた『The Weight』あたりがまず有名。1曲目の『怒りの涙(Tears Of Rage)』のオルガンも絶品。
 ジャケットの上手いんだか下手なんだかわからない水彩画は、ボブ・ディランによる(どーりでそこはかとない味わいが(爆))。

 '78年に解散(ロバートソンによって強引に幕を下ろされた)してしまったザ・バンドだが、その後ロバートソン抜きで再結成されている。
 しかし、ロビー・ロバートソンのいないそのバンドはザ・バンドではない‥と僕は思っている。それはレボン・ヘルム抜きでも同様で、あの音はあくまでもこの二人が張り合って作り出したものなのだと思う(…と云いつつ、ロバートソン抜きの再結成ライヴもやたら良かったりしたんだけど(笑))。
 そして勿論あの5人の個性が絶妙に揃ってこその音でもあり、それがもう叶わなくなったのは非常にさびしい。

 


+--prev---index---next--+

 

Copyright2001 Nyanchoo

DO,DE,DA