Goffin & King Will You Love Me Tommorow
Goffin & King
Carole King

 

 アメリカ屈指の大作曲家のキャロル・キング先生も、当初は平凡な可愛い子ちゃん歌手としてデビューしてるんだよね。デビュー・シングルは'58年の『The Right Girl』。このときキャロル御年17歳。

 このデビュー・シングルだけど、マニアにとっては垂涎の曲でも、当時のヒット曲のレベルからしても、ごくごく平凡な曲… と云うか、よくこんな曲でABCパラマウント社からデビューできたよな〜と、その幸運を神に感謝したいような歌。
 高校時代にトーケンズに夢中だったキャロルが、その中心核だったニール・セダカ(ご近所だったらしい)やポール・サイモンの力添えでレコード会社に売り込みをかけたってのは有名な話だけど、ニールやポールだって駆け出しのヒヨッコ、レコード会社に対してそれ程力があったとも思えない。
 なのにキャロルがどうしてめでたくデビューに漕ぎ着けられたか?

 それは、デッカからブレンダ・リーが、MGMからコニー・フランシスがデビューし、アイドルとして人気を博していった対抗馬にキャロルを充てた… という、ABCパラマウントのお家事情があったようで、プロデューサーは、鬼才ドン・コスター。
 だけど、キャロルはこけちゃった。
 理由は多々あるだろうけど、楽曲について見れば、当時の4枚のシングルを聴いた限り、まだキャロルの音楽的才能は開花していない。残念なことに。

 そんなキャロルに転機をもたらしたのが、ドン・カーシュナー。彼はアルドン・ミュージックという音楽出版社を設立していて、アルドンの専属ライターとしてゴフィン&キング(作詞を担当し彼女の最初の夫となるジェリー・ゴフィンのコンビ)と契約。
 そしてシレルズに書いた『Will You Love Me Tommorow』が全米第1位に輝く程の大ヒット !!!

 当時、アルドン・ミュージックのソングライター・チームは次々とチャートを賑わすヒット曲を産み出していて、アルドンが居を構えていたビルの名前から“ブリル・ビルディング・サウンド”なんて呼ばれていたんだけど、ゴフィン&キングもめでたく輝けるその一員に。このあたりの雰囲気は映画『グレイス・オブ・マイ・ハート』を観るとよくわかるかもしれない。

 以降、'62〜'63年をピークに、数々のヒット曲(『The Loco-Motion』(Little Eva)、『Chains』(The Cookies)、『Go Away Little Girl』(Steve Lawrence)等)を多くのシンガーたちに提供したゴフィン&キングの影響力は、彼女らに憧れた遠くリバプールの小僧が、「自分たちが作った曲のクレジットを“レノン&マッカートニー”としよう」な〜んて取り決めた逸話からも窺える程。

 しかし盛者必衰の理の如く、ゴフィン&キングのスタッフ・ライターとしての黄金時代にも翳りが見え始める。
 ビートルズが世界を制覇した'64年、自作自演のコンボ形式が台頭してきて、プロデューサー+プロのソング・ライターなんていうショー・ビジネス・スタイルのアイドルは廃れていった。
 そうしてゴフィン&キングは、彼女らに憧れたビートルズ(彼らが初めてNYへ行った時、最初に表敬訪問した先は、キャロルだった)に、その終止符を打たれることになる…。

 '68年、ジェリーとの結婚生活にも破綻したキャロルは、彼とのソングライター・コンビも解消。シティというバンドを結成し、唯一のアルバムとなった『夢語り(Now That Everything's Been Said)』を制作。配給のゴタゴタで一部のファンにしか評価されなかったけど、このアルバムもすごくイイんだよね〜。

 その後、ソロで『ライター』という自虐的ともとれるタイトルのアルバムを発表。
 そして!
 302週(うち15週1位)に渡って全米チャートにランキングされる不朽の名盤『つづれおり(Tapestry)』が発表される。

 キャロルが職業作曲家からシンガー・ソングライターへ転身したのは、半ば仕方がなくでのことだったのかもしれない。
 けれどベトナム戦争が泥沼化し、音楽で革命が起こせるかもしれないという思いが幻想だと気付き、ほとほと疲れ切っていたアメリカに、ごく私的な視点で愛や友情といった人と人とのつながりを歌った、シンプルこの上ないキャロルの歌声とピアノは、心地よく響き、人々の気持ちを鎮静させた。

 この『つづれおり』でキャロルは、『Will You Love Me Tommorow』をセルフ・カバーしている。
 キャロルがテープに吹き込んだ曲に、ゴフィンが15分で詞を付けたと云われるその歌は、あれから10年以上の歳月を経ても色褪せることはなく、果 てしない美しさを放っていた。

 そしてまたそこから20年。
 '90年3月に、初来日したキャロル・キングをNHKホールで観た。
 そこで歌われた『Will You Love Me Tommorow』の時代の変化をものともしない流麗なメロディは、永遠に感動を与えてくれることを示していた。
 涙が落ちた。

 さて、『Will You Love Me Tommorow』だけど、何を聴くか?(笑)
 取り敢えずオリジナルであるシレルズのポップポップしたバージョンは押さえておきたい。そうすることで、『つづれおり』の中のキャロルのセルフ・カバーの良さが見えてくる。『Goffin and King Songbook』のような編集盤なら、原盤をそれぞれ集める手間なく、まとめてソングライター時代の曲が聴ける。
 ただ、個人的に好きなのは、'94年に出た『イン・コンサート(In Concert)』でのライヴ・テイクかな。『つづれおり』と同時期の『カーネギー・ホール・コンサート』でのテイクも素晴らしいけど、51歳のキャロルが歌う『イン・コンサート』でのテイクは、どれも感動的。
 このアルバムは、僕にとってはBGMにはならない。

 


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